パン生地は長いたくさんの工程の先にある「焼成」でやっとパンになります。
パンのレシピを見るとネットでも本でも、焼成について詳しく記しているのはごく稀なケースです。
大抵、オーブンの設定温度と焼成時間が書いてあるだけです。
「あとは任せたっ」と言わんばかりに…。というわたしのレシピも同様です。スミマセン。
焼成の目的
パンの焼成は「焼けばパンになる」という単純なものではありません。
焼成の目的は5つあります。
《焼成の目的》
⑴発酵によっておこる炭酸ガスの発生により、パンのボリュームを形成する
⑵でんぷんをアルファー化し、消化の良いパンを作る
⑶クラストに焼き色をつけ、味と香りを向上させる
⑷イーストのガス発生力を止め、同時に各種の酸素作用を失活させる
⑸でんぷん糊化後の余剰水分を蒸発させ、食感の良いパンを作る
焼くということだけで
実はこんなにも色んな重要なことがつまっていたのです♪
焼成中の生地変化
焼成中のオーブンの中を観察すると、おもしろいように生地が変化します。
⑴オーブンの熱は最初の数分間で、生地の表面から内部に浸み込む。
⑵酵母の活動が促進されて、5~8分でふくらみきる。
⑶クラスト(表皮)が出来て、色がつき始める。
⑷徐々に水分が蒸発するので、容積が小さくなる。
⑸クラスト(表皮)カラーは最終的には黄金褐色になる。
なんでオーブンの中でふくらむの?
オーブンの中で生地がふくらむ理由は2通りあります。
⑴酵母が温度上昇により活動を促進させ、炭酸ガスを発生する。
⑵生地中に溶けている炭酸ガスの気化・酵母のガス発生による生地の膨張は、
酵母の死滅するまで続き60~65℃で停止する。
つまり、オーブンの中に入って死滅する温度になるまでは
イースト(酵母)が生きているってことなんです!
焼成の注意点
焼成の基本的な注意点は6つあります。
⑴素早く出し入れする
⑵オーブンに入れた直後から8分間は扉を開けてはいけない
※これは上記【焼成中の生地変化】の⑴と⑵の最中で、庫内温度が下がると生地が沈下するため
⑶オーブンのくせを知っておく
・天板を入れ替える
⑷型と型とに均等な間をあける
・10㎝幅の型なら10㎝(難しければ5㎝)の間隔が理想
⑸大物は下火で、小物は上火で焼く
・パン屋さんの場合は、オーブンをONにした1時間後に下火のみOFFにしても小物パンは焼ける
⑹連続で焼く場合は扉の開閉で庫内温度が下がる
頭に入れておくと良いポイントは
下火が強ければパンはよく伸び、
上火が強ければパンの伸びが悪くなるということです
オーブンの予熱
オーブンに入れて焼くためには、予め使用する温度になるまで温めておきます(予熱)。
【オーブンが温まるまでの時間・オーブンについている温度表示】
実は上記のふたつはオーブンによって差があるので、必ずしも正確とは言えないのです。
そのようなわけで、先の【焼成の注意点】の⑵にオーブンのくせを知るという項目があるわけなのです。
その上でお伝えすると…
予熱時間5~7分くらいで設定温度になるオーブンは多数あります。
わたしの場合、
冬季は予熱で部屋を暖めるので、1時間前にON。
夏季は20分くらい前です。
温度設定と焼成時間
オーブンの焼き時間は予熱と同じく、オーブンによって異なります。
目安として、小物パンは10~20分、型焼きパンは30~60分と考えていいと思います。
《焼成時間に関係すること》
①天板の上にパン生地が幾つのっているのか?(生地の数)…少ない方が焼成時間が短い
②天板1枚で焼くのか、2枚で焼くのか?(天板の枚数)…1枚の方が焼成時間が短い
③型焼きパンは1つなのか、2つ以上なのか?(型数)…少ない方が焼成時間が短い
④リーンなパンか、リッチなパンか?(生地の種類)…リッチなパンは焼き色が早くつくので注意
⑤水分のある副材料を含んだ生地か?(副材料の種類)…水分が残ると生地がナマになる
実際にオーブンによって10分くらいの誤差が出てくるのが普通です。
温度設定のおおよその目安として、以下のことを覚えておくと便利です。
【焼き時間の半分を経過したときに色づき始めなければ、温度を少し上げる】
上記の④と⑤はナマ焼けになり得る注意事項です。
リッチな配合の生地は色つきはいいので、色だけ見ていて時間を気にしていないとナマ焼けや焼成不足に転ずることがあります。
特に型焼きパンの蓋がない場合、天井に近いところは焼き色があっと言う間についてしまいます。
そのような場合はアルミホイルで覆って焼き色がつかないように調整します。
⑤の水分の多い副材料とは、シロップ漬けのフルーツや焼いたら水分が出る野菜やフルーツ、事前に調理した炒め物、水切り不足のツナなど…
これらの生地まわりだけナマ焼けにならないように、水分(油分)を事前に切る対策は大前提です。
焼き上がりは良い色&良い香りで判断します♪
裏面の焼き色チェックも今後の参考になりますよ。
参考:パン作りの失敗と原因
製パンの原料のはなし
お砂糖と糖質のはなし
塩と水のはなし
オーブンの特徴
パン屋さんのオーブンに種類があるように、家庭用オーブンにも種類があります。
オーブンの一般的な特徴を挙げておきます。
コンベクションオーブン
庫内にファンがついているため温度が均一になり換気性も優れています。
一度にたくさん焼けるので効率がよく、家庭用オーブンでは群を抜いています。
デメリットは、若干焼きムラができることです。
旧式ガスオーブン
このオーブンの特徴は、火周りがとてもいいことです。
良すぎるのでどうしても奥の方が焦げやすく、気をつける必要があります。
火周りの良い上段から天板を1枚ずつ入れていき、
焼き色がついてきたら中段に入れ替えることで、複数同時に焼くことができます。
電気オーブン
上下段に分かれている機種は、小物パンは上段から入れて色がついたら下段に移すときれいに焼けます。
上中下段ある場合は、1枚焼きの場合は中段で焼き続けます。型焼きパンは下段で焼きます。
脇が焼けにくいので気をつけます。
わたしは小型のコンベクションオーブンで
上中下段のものを使用しています。
小物パンのボリュームが少ないものは、2枚焼きできます(^^♪
参考:パン屋さんの機械(オーブン)
パン屋さんのオーブン ←わたしのオーブンを載せています
スチーム機能
パン屋さんのオーブンではバゲットなどの焼成時にスチームを注入します。
スチームはボタンを押すだけでシューッと注入できるのですが、
家庭用オーブンで同様の機能がついているものはまだ少ないです。
スチーム機能がない場合は、金魚の水槽に使う小石などを使うとよいです。
サウナのロウリュのように焼いた石に水を注ぐというやり方です。
スチームのはなしはまた今度…
焼成 まとめ
今日は「焼成ってオーブン内の温度は高くても低くても良くないんだ」
「決められた温度や時間ではなく、自分のオーブンでベストの状態を見ることが大事だよ」
「はじめてのレシピはやや低めの温度設定で試すのが焦がさなくてよいのかも」
「オーブンに入れてから8分間は扉を開けてはいけませんよ!」
「これで“あとは任せたっ!”をゆるしてもらいたい」というおはなしでした。
コメント
いつもは美味しそうと見ていたパンが、かわいく愛しく見えてきました。
こんにちは!コメントありがとうございます。
パンのかわいさ愛おしさとおいしさを共有&共感できて嬉しいです(^^♪
Merci beaucoup!