
パン作りの原材料としての塩と水を取りあげます。
省略していますが、塩は食塩のことです。
このふたつの原材料って、パン作りには欠かせない存在でありながら
あれやこれやと言わないとっても控えめ?なんです。
塩

塩(しお:英:SAIT,仏:SEL,独:SALZ)は、塩化ナトリウムを主成分とし、
海水の乾燥や岩塩の採掘から生産される物質です。
料理では、「塩は味付けの基本になり、うまみを強め、甘みを引き立て、酸味をやわらげる。
また、細菌の繁殖を抑える防腐作用のほか、野菜や果物の変色を防ぎ、アクや汚れ、
苦味などを取り除く作用」として使用します。
種類としては精製塩と天然塩のふたつに分けられます。
塩の原料・製法

天然塩は大きく分けて、泉・湖・海・地中に存在しています。
よって大きく分けて湖塩・岩塩・海塩(天日塩など)・井塩(山塩・地下塩水塩)の4種類が原料となります。
塩の製造はその採取方法の違いによって、岩塩とせんごう(煎熬)塩とに区別されています。
《塩の製造法》
・天日製塩法…塩水を天日で乾燥
・流下式田園…風による蒸発を促進
・せんごう(煎熬)採塩法…天日や風で濃縮された塩水を塩釜や製塩土器で煮詰める など
日本には岩塩の資源がないため、塩はもっぱら海水を煮詰めて作る方法です。
パンにおける塩の役割

パンにおける塩の役割はとても多く、しかも重要です。
⑴グルテンをひきしめる
⑵生地に弾力とコシを与える
⑶酵母の発酵をコントロールし過発酵を防ぐ
⑷生地の老化を防ぐ など
《塩を入れないとどうなる?》
・生地がベタつき、のびが悪い
・パンの膨らみが悪い
・味にしまりがなく、おいしさが損なわれる

塩が小麦粉のタンパク質に対して働いているんです。
”塩によってタンパク質の分子がほぐれ、溶解するので
タンパク質分子がもつれあってグルテンを形成する”というわけです(^^♪
参考:製パン原料のはなし
小麦粉のいのち、グルテン
イーストと発酵のはなし
パン作りの失敗と原因
どんな塩がパンに向いているの?

パンに使用する塩の種類に関する考えはふたつに分かれます。
⑴精製塩…塩化ナトリウムが95.5%以上で余計なものを含まず、さらさらとしていて使いやすい。
不純物を含む(ニガリなど)塩はパンのうまさの邪魔をする。
⑵天然塩…*旨味のある方がパン自体の味をよくする。
*旨味がある食塩とは、純度の低いニガリなどの不純物を含むもの。
ニガリ(塩化マグネシウムを中心に形成)が多いと苦いが、適度に不純物が含まれていると甘みを持った塩味に感じる。

わたしは後者の考えです。
いろんな天然塩を使用しています。
天然塩の方が水分があって重いのでやや減塩効果になっているかも???
塩の配合・注意事項

注意するべきことは、【塩がイーストに直接ふれるのを防ぐ】これに尽きます!
さて、塩の使用量【配合】については小麦粉に対して0.8~2.0%がおいしいパンの許容範囲です。
基本的に、無塩パンはおすすめできません。
しかし、健康上などの理由で減塩パンを希望されるなら、0.6%の使用をおすすめします。
なお、2.2%以上になるとイースト菌が死滅するほど発酵が抑制されてしまいます。
水

製パン原料の中で水は、小麦粉の次に重要な素材です。
小麦粉のタンパク質をグルテンに変えるのに不可欠だからです。
そこで注目するのは、水の量と質です。
水量と水質はパンの出来具合を左右するので大切です。
水質

水は、その中に溶けている無機塩類量によって硬水と軟水とに分類されます。
・硬水…ミネラル多い
・軟水…ミネラル少ない
悪影響をおよぼす水質
⑴マグネシウムが多い…酵母の働きが悪くなる
⑵マンガン…酵母の働きが悪くなる
⑶鉄分を含む…小麦の中の色素と反応してパンが黒くなることがある、酵母の発育にも影響する
製パンに適した水

中程度の硬度を持ち、弱酸性の水が最適とされています。
また、異味・異臭・バクテリア・大腸菌などの検出がない衛生的な水であることが大切です。

要は、飲料水としてよい状態のものは
パン用の水としての第一関門はクリアです
基本的には、日本の水道水はパン用に使用できます。
気をつけるべきはマンションなどの水道水です。
この場合は貯水槽から送られてくる可能性があるため、成分を気にした方がいいかもしれません。
水の量

実は、水の量が”パンの出来”を80%決めると言われています。
そのような中で、水の使用量【配合】については小麦粉に対して45~70%が一般的です。
範囲が広すぎる?と思われる方のために【標準は63~68%】ということも追記しておきます。
もちろんパンの種類や製法などの目的によって、レシピは変わりますので基本として頭に入れておくとよいと思います。
難しいのが、水量は様々な状況を鑑みて加減をしなければならないというところです。
《水量に影響するもの&環境とは?》
⑴小麦粉
・種類…例えば同じ強力粉でも種類によって吸水がちがいます
・古いか新しいか…粉の保存状況により吸水が変化します
※同じ小麦粉でも微妙にちがうので毎回注意が必要です
⑵気温
・気温/湿度が高い(夏)…水量を減らす
・気温/湿度が低い(冬)…水量を増やす

このような調整をする中で
標準の63~68%の中にあるか、あるいは
45~70%の範囲内にあるかを確認すれば安心できると思います。
参考:どうしよう?!水量をまちがえた!
パン作りの失敗と原因
水温

最後に、最良のパン生地を作るために必要なことは、温度管理・水温管理です。
捏ね上げ温度のためには、ここを慎重に対応しなくてはなりません。
通常水道水を使用していても、夏場の水道水は冷水でも適温には高すぎます。
そのような場合は、冷水に氷をまぜて水温の調整をしたり、
ミキサーボールの外側から氷水をあてて、捏ね上げ温度が上がり過ぎないようにします。

仕込み水が低すぎると
グルテン形成に少し影響します。
そのような場合は、小麦粉や副材料を冷蔵庫に入れるなどして
全体の温度をさげるように工夫します(^^♪
参考:捏ね上げ温度とミキサーのはなし
パンの作り方 製法②中種法 (中種法の捏ね上げ温度について)
塩と水 まとめ

なんでもない顔して、結構重要な役割の塩と水。
それぞれが素材のままで勝負というところもちょっと男前な原材料です。
今日は「塩も水もないとパンは作れない」「水量の加減は経験しかないのよね」
「まず、レシピ通り作ってみて毎回メモを残すといいよ」
「まだ試したことがない炭酸水仕込みは今度チャレンジします!」というおはなしでした。
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