今回は、大型機械による操作に適している中種(なかだね)法についてお話します。
そもそもパンの製法は大きく分けて4つあります。
それぞれの製法の選び方は、出来上がりの食感のほか、
設備や生産量に労働力、そして製造販売の規模の大小で変わってきます。
パンの製法 中種法(スポンジ法)
中種法とは?
材料を2段階に分けて混ぜ合わせ、じっくりと時間をかけて発酵を行う方法
最初に仕込む生地を“中種”と呼ぶ
この製パン法は、ミキシングを二度行うなどの手間はありますが、
“中種”の発酵状態に多少のズレが生じても、
その生地の様子を見ながら“本捏ね”の時に、適切な調節を行うことができます。
中種法の誕生
1950(昭和25)年にアメリカで開発された中種法は、スポンジ法とも呼ばれています。
小麦粉の50%以上にイーストの全量を水と混合して中種を作り、
室温で3~5時間発酵させた後に、残りの小麦粉と副材料・適量の水を加えて本捏ねする方法です。
中種法の種類はたくさんあります。
日本の大多数のパン工場がこの中種法を採用しています。
中種法の種類
“中種”の混入割合や発酵時間などで、中種法の種類が分かれます。
いずれにしても、長時間発酵&二度のミキシングでグルテン伸展性が非常によくなることや、
大型機械の操作に適しており、ボリュームのあるソフトなパンに焼き上げられることから
日本の多くのパン屋さんがこの製法を用いたパンを作っています。
70%中種法(標準法)
小麦の70%を中種に入れて4~5時間発酵させ、残りの小麦粉30%を本捏ねで添加する
日本のパン屋さんの多くが採用しているのはこの70%中種法!
100%中種法(フルフレーバー法)
1959(昭和34)年にアメリカで発表された、中種に全量の小麦粉を使用する方法です。
全量の小麦粉を1回目に使用するということは、
本捏ね時に加えるのは食塩・砂糖・水(*粉乳・油脂)のみです。
そのため、中種の管理が難しく、またオーバーミキシングにならないよう注意が必要です。
フルフレーバーと言うだけあって
極めて風味がよいです♪
*粉乳・油脂は中種に使用する場合もあります。
短時間中種法
中種の発酵時間を標準より短い2~3時間ですませる方法です。
長時間中種法(オーバーナイト法)
夕方から夜にかけて翌日のための中種を8~15時間発酵させる方法です。
加糖中種法
通常の中種には、食塩も砂糖も加えないのですが、加糖中種法は糖分を加える製法です。
糖量が20~30%と多い配合の生地に用いられます。
低温長時間中種法
中種生地を室温で20~30分発酵させた後で、低温(冷蔵庫)でじっくりと生地を発酵させる方法です。
中種法の特徴
中種法で作ったパンの特徴は、ストレート法よりもさらに優れた風味とボリュームが出ること!と言えます。
ここではもっと具体的に製法の長所と短所を挙げておきます。
中種法の長所
・パンにボリュームが出る(容積が大きくなる)
・食感&風味がよく、コクがある
・内層がきめ細かい
・老化が遅い
・パンがソフトである
中種法の短所
・中種捏ね上げ温度を正確にしないと焼き上がりに大きく影響する
・中種の管理が難しい
・ミキシングタイムの融通性がない
・本捏ね&本捏ね捏ね上げ温度の調整が困難
・機械耐性が弱い
中種法の本捏ねにおける仕込み水温の計算方法
希望捏ね上げ温度×4-(室温+粉温+上昇温+中種終点温)=本捏ね仕込水温
比較参考:ストレート法の場合(捏ね上げ温度とミキサーのはなし)
※中種法の捏ね上げ温度は24℃が標準です
中種法 さまざまな調整
中種はグルテンを硬化させる食塩を含まないため、水和が速やかでイーストも発酵しやすい。
また、中種の発酵時間が長いため、粉の酸化も進行する。そのままだと粉臭くなるため
イーストフードを添加するケースが多い。
イーストフードについてはまた今度…
中種は4時間発酵が最高だと言われています。
本捏ね後(一次発酵→分割→まるめ)のベンチタイムは15分が基準です。
ベンチタイムの過不足で、パンの内層の細かさやその後の機械耐性に影響が出ます。
つまり、
正しく捏ね上げて作業時間を守りましょう!ということです。
中種に食塩(や砂糖)はなぜ入れないの?
中種に食塩や砂糖を加えない理由はいくつかあります。
①生地中の過剰な有機酸の生成や風味に対する悪い影響を抑えるため
②砂糖には発酵速度を速め、生地耐性を低下させる力があるため(発酵時間の調整)
③砂糖を本捏ね時に加えることにより、オーブンでの色付きがより有効になるため
④食塩によるイースト発酵抑制の力を防ぐため(生地熟成の時間短縮)
まとめ
難しいことも多かった中、ここまで読んでくださりありがとうございます。
今日は「中種法はパン屋さんがおいしいパンにするために、色んなことに気を付けながら焼いているパンのことだよ」というおはなしでした。
パン屋さんで『○○種製法』『○○種仕込み』というPOPやのぼりを見たら、
「何やら時間をかけて作られたパンなんだ!」
ということだけでもわかってもらえたら嬉しいです(^^♪
コメント