液種法とその他の製法。これもパンの製法の種類です。
パンの製法にはいくつか種類があり、これまでにストレート法と中種法を紹介しました。
参考:パンの作り方 製法①ストレート法
パンの作り方 製法②中種法
液種法(えきだねほう)
「液種法」 (別名;水種ミズダネ法)とは、粉の一部(20~40%)と粉と同量の水をイースト(酵母)と一緒に粉気がなくなるまで混ぜ、
20時間~48時間発酵させる製パン法です。
中種法の一種でありながら、発酵種が水っぽいしゃばしゃばのものなので別に分類されています。
つまり「液種法」は、糖と緩衝材と酵母を水に混ぜて別途発酵させて、本捏ね時の発酵に時間をかけない製法です。
この時の緩衝材の種類で製法名が変わります。
アドミ法
緩衝材が脱脂粉乳(スキムミルク)のものがアドミ法です。
アドミ法はアメリカのミルク製造会社が作り出したパンの製法です。
ミルクを多量に使用したパン種は、安定した品質のパンを量産できます。
ポーリッシュ法
フランスでよく使用される「液種法」がポーリッシュ法。緩衝材は小麦粉です。
19世紀にポーランドで生まれ、現在はフランスでよく使われるパンの古い製法です。
全体の50%の小麦粉と同量の水とイーストを混ぜて種を作り、2~3時間発酵させます。
発酵は約3倍以上の膨張が目安で、気泡が大きくなり破れてきた時=種落ち(沈みかけてきた時が限度)までです。
《ポーリッシュ法の特徴》
・パン生地に力を与える
・程よい酸味が生まれる
・保存性がある
・二度手間がかかることが欠点
オーバーナイトポーリッシュ法はイースト量を減らし、
捏ね上げ温度や保存温度も低くして作ります。
液種の発酵時間が長い分、本捏ね後は3時間ほどで焼き上げることができます。
ブリュー法
緩衝材が炭酸カルシウム(日本では昭和32年から食品の強化剤としてパン・味噌・菓子・納豆に使用されるようになった)の製法です。
その他の製法
〖その他の製法〗とまとめていますが、これから挙げるものは中種や「液種法」の仲間を使った製パン法です。
というのも、先にあげた「液種法」を用いた製パン法ではパンの風味がいまいちなので、
風味を添加する意味をふくめてサワー種を用いるようになりました。
サワー種の種類に合わせて製パン法の名称が変わります。
参考:パン種の種類
サワー種法
サワー種とは、パン生地を放置して空気中にある乳酸菌などから酸を作って、
パンの風味や生地の物質的な改良と保存性の向上、老化抑制につなげる製パン法です。
使用する原料や種次ぎ方法、育成環境(温度・湿度)によって
サワー種の乳酸菌や酵母の種類が変わってきます。
ホワイトサワーは小麦粉、ライサワーはライ麦が原料です
ホップ種(ホップス種)法
原料がジャガイモ・リンゴ・小麦・ホップをつかうものをホップ種と呼びます。
ホップは受粉する前にとった酵母で、独特の香りとおいしさが引き立ちます。
ホップ種単独でパンを作るのは難しいのでイーストと併用します。
油脂や砂糖の多い生地よりも少ない生地の方が合います。
小麦を使ったホワイトサワー種で有名なのは
イタリアのパネトーネ種(スイスサワー種とも呼ばれます)とアメリカのサンフランシスコサワー種です。
酒種(さかだね)法
米・ごはん・麹を使ったものが酒種と呼ばれます。
具体的には主として麹の種や清酒の種から発酵させるものです。
粉100%に対して酒種を5~10%の割合で生地に加えることで、焼き色が美しく皮がやわらかく、ほのかな酒の香りがするのが特徴です。
日本では木村屋総本店が酒種あんぱんを誕生させました。
果実種法
果実種でポピュラーなのはレーズンですが、様々な果実で作ることができます。
果実をすりつぶして自然発酵させ、天然酵母を増殖させたのちに小麦粉を加えてペースト状の種にします。
老麺種法
老麺法は古くから中国で中華まんじゅうなどによく使われていました。
「古生地法」とも言われるこの製法は、古い生地を使うことでパンの風味が増し、
香りが良くなり、外皮が薄くソフトな食べ口になるのが特徴です。
もともとは天然酵母で作られた生地のようですが、近年では古い生地を足していく…というかんじで使われています。
中麺法
中麺法は、イーストを入れるタイミングに特徴があります。
それは、生地ができてからイーストを投入します。グルテンがしっかりと構成されるという特徴があります。
ホームベーカリーには中麺法を取り入れているものがけっこうあります!
連続製パン法
連続製パン法とは、製パン工場で連続的に作業ができるように考えられた製法です。
液種を使用する方法と中種のような別の種を使用する方法とがあります。
チョリーウッド法
イギリスで開発された連続短時間製パン法です。
チョリーウッド法のために専用の高速ミキサーが開発されました。
製法は高速ミキサーにてストレート法を応用して、ミキシングと生地熟成を同時にするというものです。
冷蔵(冷凍)製パン法
製パン工程で生地を凍結した冷凍生地を用いる製パン法が、1940年にアメリカで考案されました。
《利点》
①新鮮なパンの提供 ②夜間や早朝作業の廃止ないし軽減 ③休日対策
④作業ピークの平均化⑤多種目少量生産 ⑥労働の省力化 ⑦配送の合理化
⑧老化返品の減少 ⑨設備スペースの節減など
《弱点》
・冷蔵/冷凍障害(ストレス)がおこる
・生地中のガス発生力とガス保持力低下
※技術者の高度な能力が必要
冷凍生地についてはこちら↓をご覧ください♪
製パン法③ まとめ
今日は「ストレート法や中種法に「液種法」など、パンの作り方はたくさんあるんだよ」
「自家製向き・工房向き・大工場向きなどがあるため、作り方に応じた製法を選ぶことも大事だね」というおはなしでした。
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