
フランスには「フランスの製パン法」があるってご存じですか?
さすがパンの国!というだけあって、パンにはとても厳しいお国のルールがあるんです。
それは、小麦粉をはじめとする使用する原材料にも、製パン方法にも関わっています。
わたしはほんの2年フランスにいただけ、たった半年の製パン学校で学んだにすぎませんが、
その間でも十分にパンを愛する国民性と、フランスの製パン法について知ることができました。
参考:パン留学①準備~到着編
パン留学②語学学校~受験編
パン留学③INBP~帰国編

フランスの製パン法 小麦粉

日本では、カナダ産をはじめとする輸入小麦粉(主に強力粉)が製パンに使用されています。
近年では、製パンに向いた国内産小麦粉も作られ、使用されるようになりました。
パン工場やパン屋さんがどんな小麦粉を使おうと、国のルールはありません。
しかし、フランスの製パン法では「フランス産小麦粉100%使用」の決まりがあります。
小麦粉

フランスの小麦粉の最初の6種類はこちらです。
《Farine Ordinaire:小麦粉》
▣Type45(ティップ45)…白い小麦粉、菓子用(日本の薄力粉に類似)
▣Type55(ティップ55)…パン用粉1
▣Type65(ティップ65)…パン用粉2
▣Type80(ティップ80)…パン・ド・カンパーニュ用粉1
▣Type110(ティップ110)…パン・ド・カンパーニュ用粉2
▣Type150(ティップ150)…全粒粉パン
続いて重要なのがこの2種類の超強力粉です。
《Farine Gruau:小麦粉》
▣Type45(ティップ45)…ビエノワズリー用1(タンパク質11%)
▣Type55(ティップ55)…ビエノワズリー用2(タンパク質11.5%)

ビエノワズリーとは
クロワッサンやパンオショコラなどの菓子パンのことです♪
基本的なパンはふたつのType55を使用します!
ライ麦粉

フランスのライ麦粉は4種類あります。
▣Type70(ティップ70)…ふすま0.6~1%→白いライ麦パン(40~60%使用)
▣Type85(ティップ85)…ふすま0.75~1.25%→白いライ麦パン(40~60%使用)
▣Type130(ティップ130)…ふすま1.2~1.5%→黒いライ麦パン(60~80%使用)
▣Type170(ティップ170)…ふすま1.5%以上→黒いライ麦パン(60~80%使用)

全部数字なのでわかりづらくてすみません(・・;)
フランスの製パン法 名称

パンの名称についてもルールがあります。
日本のように自由でユーモアのあるパンの名称は、フランスのパンにはほとんどありません。
例えばライ麦パン。
ライ麦粉の使用量で名称が変わります。
▣Pain de Seigle(パン・ドゥ・セーグル)…ライ麦粉を35%以上使用しているもの
▣Pain de Méteil(パン・ドゥ・メテイル)…小麦粉とライ麦粉を50%ずつ使用しているもの
▣Pain aux Seigle(パン・オ・セーグル)…ライ麦粉を10%以下のもの
フランスの製パン法 ミキシング

ミキシング方法に関しても、日本のパン屋さんのミキシングと違いがあります。
日本では、使用するミキサーによってミキサーの特徴が違います。
それぞれの機械にシフトレバーがあって、1234なり強中弱、またはLMH…があり、
強さの組合せを調整して生地を仕上げていきます。
ところがフランスのミキサーは3タイプで、それぞれ回転数が決まっているのです。
▣Petrissage Vitesse Lente:PVL…1950年代のミキサー、600~800回転/1分間
▣Petrissage Intensifié:PI…1960~1980年のミキサー、1600回転/1分間
▣Petrissage Amelioré:PA…1980年以降のミキサー、1000回転/1分間
現在はほとんどPAなので、だいたい中速で12分回せばよいのです。簡単。

PVLは発酵時間が3時間で、クラムが黄色、ボリューム出にくい。
PIは発酵30分~1時間で、クラムが白色くつまる。
PAはクラムがクリーム色 とパンの出来も変わります。
フランスの製パン法

フランスの製パン法は様々あります。
すでに日本でも取り入れられているものばかりです。
①3時間発酵法(2時間ーパンチー1時間)
②オートリーズ法…小麦粉と水を低速で混ぜ合わせて20~40分休ませる
③ポーリッシュ法…ポーランドで作られた古い製法(全体の1/2の水量と水と同量の小麦粉とイーストで種を作り、2~3時間発酵させて残りの材料を加えて本捏ねする)
④長時間発酵法(4時間:パンチなし)…イースト量を減らして発酵時間を長くとる
⑤発酵種法(パン生地を用いて発酵時間を短縮)…発酵種を10~40%投入して発酵時間を短縮する
⑥ルバン法(自然種を用いる)
⑦改良剤法(改良剤を用いて発酵時間を短縮)

まとめ

結局のところ、フランスの製パン法はとってもシンプルです。
小麦粉の種類もややこしいことを言わずナンバーで決められているとか
パンの名称も何をどのくらい使っているかでわかるようになっている…。
こんなにシンプルなのに、日本であの味を再現できないのがもどかしいです。
わたしが実際にチャレンジした身として、
完璧に再現できない理由は、小麦粉のちがい・気候のちがい・水のちがいというところにいきつきました。
今日は「そんなフランスにも*ミックス粉があるよ」
「フランスでは短時間発酵(ストレート法)はないのよね」
「フランスのパン屋さんでも新しいパンを作るけど、イマイチ売れないらしい」というおなしでした。
*ミックス粉も配合がある程度決められています。
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