
油脂は、全てのパンに使われているわけではありません。
例えば、フランスパン(バゲット)やドイツパン(ワイツェンブロート)には油脂は入っていません。
一方で、食パンや菓子パン・バターロールなどの多くのパンに油脂が使われています。
しかも、油脂の種類は数多くあります。今日はそんな油脂についての特徴や効果などのおはなしです。
参考:製パン原材料のはなし
油脂とは?

油脂とはあぶらのことで、「油」と「脂」は、常温で液体(脂肪油)か固体(脂肪)かで区別されます。
不飽和脂肪酸が多いと常温で液体となり、飽和脂肪酸が多いと固体となります。
また、動物性と植物性があり、原料のちがいとコレステロールの有無など成分もさまざまです。
「脂」はおもに動物油脂をさします。
このほかに、天然か人口かという区分もできます。
油脂の栄養価

《脂質》炭水化物とタンパク質とならぶエネルギー源
・1gは9kcal (タンパク質や糖質の2倍)
・ビタミンE&ビタミンF
・不飽和脂肪酸=必須アミノ酸 (成人病を予防するリノレン酸など)
・コレステロール
・レシチン (触媒作用;油と一緒に食べると乳化作用が起こる)

油脂類は糖質はゼロですが、
脂質が多いので摂り過ぎには注意が必要です。
油脂の種類

①動物性脂肪(常温で固体)
②植物性脂肪油 (常温で液体)
③動物性脂肪油 (常温で液体)
④植物性脂肪 (常温で固体)
様々な油脂をピックアップします。
動物性脂肪 (常温で固体)

バター
牛乳から分離させたクリーム脂肪を撹拌操作で集結させて作ります。
有塩と無塩があり、水分は17%以下と決まっています。
【利点】
・風味に優れており、特有の味とかおりが素晴らしく良い
【欠点】
・酸敗が早く、クリーミング性・乳化性に欠ける

パンには【風味・くちどけが良い】
【かおり・色つきがいい】、【ボリュームがでる】、
【マイルドな味】、【内相が黄色っぽい】
〘作業性がわるい〙、〘金額が高い〙などの影響があります。
発酵バター
発酵バターは乳酸菌で発酵させて作られるバターです。

パンには、【風味にコクと深みを与える】、【香りがよい】
【焼き色がある】、〖キツイ発酵臭〗、〖くちどけや食感が悪い〗
という特徴があり、高級なこともありあまり使用されません。
ラード

精製した豚脂から作られた固型脂です。
【利点】
・風味が良く、香ばしさに加え、粘稠性とコクがある
【欠点】
・夏季に軟化しやすく安定性に欠ける
・乳化性やクリーミング性がない

パンには【ボリュームが出る】、
【ソフトなパンができる】、【隠し味につかう】
〘特有のにおい〙、〘油っぽい〙などの影響があります。
その他
植物性脂肪油 (常温で液体)













植物油脂はJASマークで
精製度による等級を見分けることができますよ♪
※液体油は製パンのミキシングの際、原材料が混ざりかけた時に投入します。
サラダ油
サラダ油は精製された植物油の一種で、精製油よりも精製度が高く低温でも濁らないという特徴があります。
なお、日本農林規格(JAS)により原材料が決められています。
オリーブオイルや椿油のサラダ油は存在しません。

パンには【風味がいい】、【安定性に優れている】、【軽い仕上がりになる】
〘ボリュームに欠ける〙、〘伸びない〙、〘生地が切れる〙などの影響があります。
(植物性脂肪油 全般)
※液体油は製パンのミキシングの際、原材料が混ざりかけた時に投入します。
動物性脂肪油 (常温で液体)



植物性脂肪 (常温で固体)



硬化油


硬化油とは、マーガリンやショートニングなどの加工油のことです。
加工の際の水素化により*トランス脂肪酸が生成されることが知られています。
参考:*離乳食のパン選び(離乳食でトランス脂肪酸を気にするのはなぜ?)
マーガリン
バターの代用として、食用油脂に水などを加えて乳化した後、急冷して作られます。
等級によって異なりますが、水分は16%以下でバターの風味を追求しています。

パンには【クリーミング性がある】、【乳化性安定がある】
【バターには劣るがボリュームが出る】、【ソフトなパンに仕上がる】
【コクがある】おいしさはバターの次だと言われています。
発酵マーガリン
発酵マーガリンは、乳酸菌を発酵させて作ったマーガリンです。
ショートニング
ショートニングは、ラードの代用として作られました。
精製した動・植物性油脂で作りますが、様々な種類があります。
半固体で水分はゼロです。
【利点】
・油脂類の中では特にショートネスと粘着性に優れている(加工性がある)
・飽きがこない
【欠点】
・特にない
※味や香りは求められない
その他の油脂



このほかに、粉末油脂やシート状のマーガリン、混合(ショートニング+バター)などがあります。
まとめ
このようにたくさんの種類がある油脂ですが、パンにあった種類を選んでいくのは
そんなに難しいことではありません。
結局のところ、バター・マーガリン・ショートニング・オリーブオイルを採用する頻度が高いのは、
風味の良さや生地のまとまりがいいからだと言えます。
今日は「いつもの油脂とちがう油脂を使ってみると新しい発見があるよ」
「作りたいレシピの油脂がない場合はほかの油脂で代用できるよ」というおはなしでした。
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