イースト(Yeast)が製パンに欠かせない原材料であることと、
その正体は空気中に存在する複数の菌から、パンに向いた菌を純粋培養したものであることは繰り返しお伝えしておきます。
今回はそのイーストにも歴史があることと、色んな種類があるというおはなしです。
パン種の正体発見!
古代から、偶然のように膨らむパンになってパン種からのパン作りをしてきたのですが、
17世紀後半(1680年)に、ついにパン種の正体が明らかになりました!
顕微鏡を発明したオランダのレーウェンフックさんが、
肉眼では見えなかったミクロな生命体である『酵母(イースト)』を発見したのです!
参考:パンの歴史①小麦とパンのはじまり
パンの歴史②エジプト~中世ヨーロッパ時代
発酵の原理が解明!
17世紀に『酵母の正体』が肉眼でとらえられた後、研究が進んでいきます。
その成果として18世紀には『酒精酵母』(アルコール製造の副産物)が、
19世紀初期には酒精酵母を圧搾した『圧搾酵母』が使われるようになっていました。
つまり、当時のパン職人たちはパンを作る際にビール醸造所から酵母を入手していたのだということなんですね。
そしてついに!
1857年、フランスの生化学者であり医学者のルイ・パスツールさんが発酵の原理を解明しました。
『酵母(イースト)が糖をアルコールと炭酸ガスに分解するんだ』と!
ようやく、ここまでに約6,000年ほど食されてきたパンの発酵の製造技術が裏付けられたのでした!!!すごい(≧◇≦)!
イーストの誕生
パスツールさんが発酵の原理を解明してくれた後、
1879年以降のアメリカでは、遠心分離機を使用して酵母を濃縮した現代の市販酵母を可能にしました。
これもまた、あらゆる形で発展し『クリーム酵母』『フレッシュケーキ酵母』など、現代の生イーストの祖となる酵母が誕生していきました。
これが20世紀に代わるころのイーストです。
乾燥イーストの誕生
第二次世界大戦中(1939年以降)、アメリカ人ビジネスマンのチャールズ・ルイス・フライシュマンさんが、米軍向きに粒状の活性乾燥酵母(イースト)を開発しました。
これは、冷蔵をしなくても酵母を保存できるのみならず、優れた温度耐性をもっていました。
また、1973年にフランスのルイ・レザッフルさんがインスタント酵母(イースト)を生み出しました。
アメリカのフライシュマンズイーストも
フランスのレイザッフルも大きな酵母メーカーです
日本とイースト
日本に圧搾酵母が輸入されたのは、1908(明治14)年です。
ここから国内での研究がはじまりました。
1915(大正4)年、丸十ベーカリーの田辺玄平さんが乾燥酵母『マジックイースト』の開発に成功しました。
国内の生イーストの開発はその後で、1927(昭和2)年のことです。
大手製パン業者のマルキ号製パン、*製薬会社の三共、⁑大日本麦酒株式会社などの企業がそれぞれで研究して開発しました。
また、1927(昭和4)年に北嶋敏三さんが麦芽根を利用した製法を発見し、
日清製粉の正田貞一郎さんなどと設立したオリエンタル酵母工業は、今日でも酵母の会社として製パン業界を支えています。
現在の*三共イーストは海水から酵母をみつけて
海洋酵母なども開発していますよ♪
⁑現アサヒビールやサッポロビールの前身となるビールメーカー
イーストの種類
イーストはたくさんの種類がありますが、最も大きく分けて2種類です。
それはこれまでも何度も出てきた『生イースト』と『乾燥イースト』です。
いずれも働きは同じで、
“イーストが作る炭酸ガスが、小麦と水によってできたグルテンの中に入ってパンをふくらませる”ことです。
一般的に、イーストが活発に働くのは30~40℃の温度と適切な湿度、糖分が必要ということも変わりません。
生イースト
生イーストは、イーストを圧縮してバターのように固めた状態で売られています。
現在の酵母は主にサッカロミセス種です。
これは、古くからワイン・製パン・醸造などに役立ってきた
ブドウの皮からとれる菌だと考えられています。
《メリット》
・パンの香りや風味がいい
・パンの焼き上がりの状態がすばらしい
・予備発酵の手間がなく、すぐに混ぜて使える
《デメリット》
・手に入りにくい
・保存がきかない(2~3℃で25日くらい、5~6℃で2週間くらい) ※冷凍は向かない
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乾燥イースト
乾燥イーストは、生イーストを低温乾燥させたもので2種類あります。
一般的に粒状の『ドライイースト』と顆粒状の『インスタントドライイースト』です。
『ドライイースト』は予備発酵が必要で、予め砂糖とぬるま湯に溶かして活性化させてから使います。
もう一方の『インスタントドライイースト』は直接粉類に混ぜて使用することができます。
《乾燥イーストのメリット》
・イーストが冬眠しているような状態なので保存がきく(冷蔵庫で半年くらい)
・スーパーやドラッグストアなどで市販されている
・生イーストより使用量が少なくて良い
・粉に混ぜて使えるので楽(インスタントイースト)
《『ドライイースト』のデメリット》
・予備発酵が必要
※現在、市販されている『乾燥イースト』のほとんどが予備発酵不要の『インスタントドライイースト』です
乾燥酵母は、原材料に酵母以外のものが含まれることが多いです。
ビタミンC、乳化剤など
※『無添加』や『有機』のものは添加物を含みません
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耐糖性のイーストは、通常なら砂糖が多すぎると菌が死滅しますが、ある程度の糖分に耐えられるように作られています。
参考:イーストの実験
その他のイースト
近年の様々なパンにあわせて、酵母も選べるようになりました。
例えばセミドライイースト、機能性生イースト、天然ドライ酵母、海洋性酵母、冷凍生地用イーストなど…
セミドライイーストは、生イーストとドライイーストの中間の水分量で、冷水耐性に優れた顆粒状のイーストです。
機能性生イーストは、生地の温度が8℃以下で発酵停止するような特殊な酵母です。
ドライ天然酵母の例でホシノ天然酵母は、山林で発見した「野生酵母」と秘伝の「麹」をあわせて作られています。
※ドライ天然酵母には予備発酵が必要なものがあります。
ドライ天然酵母は、原材料に酵母以外のものが含まれることがあります。
「小麦粉」「米」「とうもろこし」などの穀類や「麹」など
※『無添加』天然酵母は酵母のみです
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まとめ
製パン技術向上の裏には当然、イーストの発見や発展がありました。
それぞれの使用量はこちらを参考にしてください↓
《イーストの使用量》
・生イースト⇒基準 ストレート法なら3.5%が標準
・ドライイースト⇒生イーストの1/2 ストレート法➡1.7%が標準
・インスタントドライイースト⇒生イーストの1/3 ストレート法➡1.1%が標準
▣生イーストとドライイースト併用の場合⇒ ストレート法では生1.7%+ドラ0.9%➡標準
今日は「イースト(酵母)のちがいでもパンの出来が変わるよ」というおはなしでした。
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