
パンの歴史は古いですが、1870年に純粋培養のイーストが完成して、
その後のパン科学の進歩によって現代の製パン法の基礎が確立されたと言えます。
もともと家庭の仕事だったパン作りが、大量生産するように発展していく中で
科学的な管理と機械の導入によって、ますます製パン工業が大きくなっていったのです。
参考:パンの歴史①小麦とパンのはじまり
パンの歴史②エジプト~中世ヨーロッパ時代
イーストと発酵のはなし
手作業の時代

パンを作る場合、生地の仕込みから仕上げまでは手作業でまかなえます。
しかし、焼き上げは火がどうしても必要で、オーブンが古くから発展しています。
固定窯の基本タイプが定着したのは19世紀後半、1830年代と言われていて、
それまではポンペイの石窯みたいなオーブンで、試行錯誤の中でパンが焼かれていました。
それでも当時のパン工場は比較的小さなもので、生産量もそれほど多くはありませんでした。
参考:パン屋さんのオーブン
母校は東京製菓学校(40周年記念でポンペイの石窯の縮小版を製作しました)
機械化の時代

現在、一般的に使用されている製パン機械の基本的なタイプが登場したのは、
1880~1920年頃です。もちろん、すべての機械が同時に開発されたのではありません。
必要に応じて、新しいアイディアも導入されて実現にいたりました。
それでも、開発されてから一般の工場に普及されるまでは時間がかかりました。
機械化から合理化への時代

部分的に機械化した製パン工場も、企業が大きくなるにつれて全面機械化へと移行していきます。
なぜならそこには、生産性や労働の問題が影響しているからです。
パンの工程と機械

パン作りの各工程に機械があります。
パンはイーストの管理でもありますので、機械により作業時間が短縮され、より良い生地を保てるようになったとも言えます。
計量


わたしは大きなパン工場で計量を経験したことがないのですが、
結局ここは人がきちんとやらなければ…と思わされる工程です。
使う道具は、天秤・バネ秤・デジタル・そして自動で粉を計量してくれる機械…などがあります。
ミキシングの機械 ミキサー








ミキサー(混合機)は、パン作りの機械として非常に重要です。
機械の作用として①原料の均一な分散②適当なグルテンの伸び③生地に空気の気泡を与えるなどがあげられます。
生地量が増えれば増えるほど、人力での混合作業は骨が折れますし、時間を要します。
短時間で最良の生地を仕上げるためにも、ミキサーは重宝します。
ミキサーの種類は複数あり、種類によって*特徴が微妙に変わります。
*ミキシングタイムや捏ね上げ温度の影響も変わります。
参考:捏ね上げ温度とミキサーのはなし
パン作りの失敗と原因
ミキシングのポイント
一次発酵の機械 第一発酵室


捏ねあがった生地は、庫内の温度および湿度が整えられた発酵室に入れて発酵の時間を待ちます。
プラスチックの生地箱(コンテナ/ばんじゅう)に入れて発酵させる部屋にいれます。
この部屋を第一発酵室と呼びます。一般的に温度は27℃、湿度は75%が標準です。

おうちでパンを作るときはこの環境をイメージして
一次発酵させるとよいですよ♪
※一次発酵を常温/室温で行うも製法もあります
分割&まるめの機械 デバインダー&ラウンダー




発酵した大きなパン生地を定めた容量・重量の生地片に分割するにも機械(デバインダー)があります。
人の手で分割した大きな生地を板の上にのせて、設定したうえでボタンを押すと、
グイーンと機械が下りてきてザクっと一気に分割し、そのままぐるぐるぐるっと生地をまるめてくれます。
めちゃくちゃスピーディーに作業が進みます。
ですが、【大分割する人⇒デバインダーを操作する人⇒まるめた生地を移動させる人】
この3役を何人で行うかで所要時間と生地の状態が変わります。急げ急げ!の作業でえっさほいさ!です。
デバインダーと麺台(作業台)の行ったり来たりは、まるでバスケットボールのピボットターンのようです。
ちなみに、パン屋さんは生地分割に慣れているので、ほぼ1発で目標の生地量を分割できちゃいます。

先日、実況写真を撮る際に10秒タイマーにしたら、
まるめは、10秒で8つ(両手で2つ×4)のペースでした。
撮影用には速度を落としています(^^♪
成型 モルダー


(この写真は生地が流れているだけ)

モルダー(成型機)は、分割・まるめした生地を、ガス抜きして形をつくる機械です。
どんな形でもできるというのではなく、平らにすることと・くるんと巻いてロール成型ができます。
例えば、モルダーから出てきた生地を、そのまま2つ折りにして食パン型に入れると成型完成です。
二次発酵 ホイロ室



成型された生地は膨らみが少なく、グルテンは粘着性を占めています。
この状態から再膨張させて熟成度・伸展性を与えて生地回復をさせるための発酵が二次発酵です。
そのために入れるホイロ室は庫内温度を38℃、湿度85%にするのが一般的です。

わたしは生地を入れた後、いつも
「あとはよろしくね!」とホイロ室にお願いして扉を閉めていました。
ホイロから出す判断をするのは自分なんですけどね(^^♪
焼成 オーブン




パンを焼く機械のオーブンは、様々な種類があります。
自宅で焼く際にパン屋さんのオーブンが欲しくなるのはハード系のパンの時です。
パン屋さんのオーブンの多くは、直焼きができて蒸気がたっぷり入れられるので、バゲットなどの皮がパリッと焼けるからです。

おうちでは皮パリッを再現するために、
石を焼いたり、珪藻土の板を使ったり…いろいろと試しています。
パン屋さんの機械 まとめ
今回は代表的なパン屋さんの機械を紹介しましたが、このほかにもいくつかの機械があります。
作るパンの種類や規模によって必要かどうかが分かれると思います。
わたしがプチペをやっていた時は、機械付きの居抜き物件を借りたので、
“前の持ち主さんが持っていた機械を使うかどうか“の判断でした。
とても古い機械ばかりでしたが、使えるミキサー・ホイロ・オーブンと冷蔵庫でやりくり。
モルダーもありましたが、使える状態ではありませんでした。
そんなわけで、一般的に*機械(モルダーかシーター)を使って作るクロワッサン生地は
完全に機械なしで麺棒で作っていました。
参考:パン屋さんの開業のはなし

とても毎日作れなかったので
クロワッサンとパンオショコラは
週2回の限定メニューにしていました!
今日は「なんでも道具だね」っていうおはなしでした。
*クロワッサン生地はバターの折込みが手間なので、既製の冷凍生地を使っているお店もあります。
参考:パン屋さんの種類
コメント