
おいしいパンを作るために、大事なミキシングのポイントのはなしです。
計量に間違いがなく、入れ忘れがなければミキシングで失敗することはありません。
ですが、よりおいしいパンを作るとなると知っておいた方がよいポイントがいくつかあります。
実はミキシングというのは、個人の技術が最も顕著にあらわれる重要な工程なのです。
そのことを認識して目・耳・手などの五感の持っている力を尽くして
最適なミキシング状態を体得することが大切です。

パンの良し悪しはミキシングで大半が決まると言っても過言ではありません!
ミキシングの役割を知る

まず、ポイント①としてミキシング(仕込み)の役割・意味を知っておくことです。
《ミキシングの役割・意味》
・原料の均一な分散
・グルテンの形成および適当な伸び
・生地に空気の気泡を与える
・材料が生地に溶け込み分散される

この中でも特に重要なことが2番目の【グルテンの形成】です。
強いグルテンを作り、発酵時にイーストの出す炭酸ガスを
少しでも有効に保持できる膜を形成することです。
材料投入の順番&タイミング

ミキシングのポイント②としては、ミキシング時の原材料の投入順を知っておくことです。
パンには様々な製法があるので、全部統一して通用するものではないですが、
基本を押さえていると応用しやすくなります。
《ミキシング投入時・投入順の基本》
⑴ドライイースト…予備発酵の開始タイミング・水温・(加える砂糖の量)に注意
⑵インスタントイースト…小麦粉に混ぜておく
⑶イースト…食塩、砂糖と接触しないように気をつける(イーストが負ける)
⑷水分
・前処理や予備発酵用の水分に気をつけて計量する(ミキシング投入時に思い返す)
・気温/湿度や粉の変化で吸水が変わるので2~5%分は様子を見ながら投入する
・水温注意(生地状態と捏ね上げ温度に影響)
⑸油脂…指定がない限りある程度生地がまとまってから投入する
⑹ナッツ、ドライフルーツ、チョコチップなど…油脂投入後の生地が完成してから投入
⑺パウダー及びフレーク類(ココア、抹茶、かぼちゃ、ほうれん草など)
・小麦粉にまぜる→グルテン形成を邪魔しない形状の場合
・⑹と同じタイミング→形状が粉っぽくない場合

イーストを殺さないための注意以外は、
全て強いグルテン形成を早く作るための注意です。
どのように捏ねるの?

それでは、それぞれどのくらい捏ねたらいいの?というのがポイント③です。
ミキシングスタート
ミキシングスタートした後は、”粉っぽさがなくなる”がひとつの目安です。
⑴材料が混ざってくる(生地状態;ドロドロと粉の2パターンあり)
⑵粉っぽさがなくなってくる(生地状態;生地をつまむと分厚く手についてくる)
⑶ミキシングボールから生地がはなれる(生地状態;手からもはなれる)

これが、
ミキサー使用なら【低速でざっと混ぜ合わせる】の状態。
手仕込みなら混ぜ始めて10~15分くらいの状態です。
この状態が油脂投入できるタイミングです!
※油脂投入がない手仕込みの場合は、ボールから出して仕上げの捏ね&たたきで生地を仕上げます。
油脂投入

低速1分

中速~中高速4分

高速1分
ミキサーの場合は油脂をある程度まとめて投入できますが、
手仕込みの場合と油脂量が多いときは、2~3回に分けて投入します。
⑴油脂が生地に混ざろうとするが、しばらくは混ざらない(低速1分)
⑵しばらくすると少しずつ生地に練り込まれていく(中速~中高速4分)
⑶再びミキサーボールや手からはなれるようなり、ツヤとキメが細かい生地となる(高速1分)

油脂を早く加えると、グルテンの形成が阻止されてしまい、
生地の水切れが悪くベタついた生地になりがちなので注意です。
手仕込みの場合は、生地に油脂が入っていく感覚がよくわかります。
ある段階で急に生地が手に吸いつくようにまとまり、扱いやすくなります。
時間にすると15~20分くらいかかります。
生地完成orトッピング投入


低速1分

このオレンジブレッドの例ではオレンジピールを投入していますが、
オレンジピールを投入する前に生地は完成しています。
⑴捏ねあがった生地を手で広げるとチューインガムのようなうすい膜ができる
⑵きれいに伸びてなめらかであれば生地の完成
⑶オレンジピール投入(今回の場合)
⑷混ざればよい
※レーズンパンなどでレーズンにシナモンパウダーやラム酒などと絡めている場合は少し長めに混ぜる

つまり、手で広げて切れるようであればミキシング不足なので
もう少しミキシングを続ける。
なめらかさ・ツヤ・生地の伸びを見て判断します!
捏ね上げ温度の確認
ストレート法での捏ね上げ温度は27℃が標準です。
それでも冬場は27.5~28℃、夏場は26.5~26℃くらいに変化します。
生地の温度が高すぎると、パンになった時にまでアルコール臭が残るなどの影響があります。

捏ね上げ温度はミキシングと大きくかかわっているので
ここまでをミキシングの工程とします。
参考:捏ね上げ温度とミキサーのはなし
パン作りの失敗と原因
パンの作り方 製法①ストレート法
ミキシングのポイント まとめ



(2022.5.28の本日のパン)
ライ麦パンのようにライ麦にグルテンが生まれないものは、生地完成時の表情が他のパン生地とは異なります。
今日は「生地完成=強いグルテン形成=うすくて伸びる膜完成=ツヤがありキメが細かい生地だよ」
「この膜がパンになった時に見える層だよ」「妥協をするとパンになった時に食感が悪くなるよ」
「数を重ねると完成度があがってくるよ」というおはなしでした。
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