
日本にはたくさんの菓子パンがあります。
そもそも歴史をさかのぼれば、日本にパンが広まったのは菓子パンのおかげでした。
今回はそんな菓子パンに注目します。
ところで、あなたの菓子パンってどんなイメージですか?
わたしは”小腹が空いた時に食べるパン”のイメージです。
先日焼いた“夏野菜ロール”を知人に渡すときに「おやつにどうぞ!」って言ったら、
『これはおやつじゃなくて、食事ね」と言われました。笑
やっぱり”おやつ”は甘いパンのイメージでしたか。確かにあのパンは調理パン生地で甘くなかった…。

(2022.6.23の本日のパン)
日本のパン伝来のおさらい

日本のパンの祖といえば、日本陸海軍の創始者でもある江川太郎左衛門さんで、
江戸時代に兵糧食としてのパンを試作した人としてその名が残っています。
日常食として庶民の間で広く食されるようになったのは明治時代になってから。
外国のパンが上陸したのは、1855年(安政2年)に日仏和親条約が結ばれて以降の横浜です。
フランス人が横浜に入ったことで、フランス人のためにパンを焼くベーカリーが誕生しました。
横浜元町の老舗ベーカリー;ウチキパンが誕生したのが1863年(文久3年)です。
このころには、ホテルベーカリーも誕生していたのですが、一部の人しか食べられない存在でした。
パンのおともは味噌・醤油

このように庶民には手が届かない存在でしたが、まれに食する機会には味噌や醤油をつけていたと言います。
当時の一般家庭には、まだ*ジャムもバターもなかったんですね。
そこで、淡白な食パンやフランスパンにつける調味料は…ごはんの感覚もあってか味噌や醤油になってしまったのでしょう。
*ジャムは明治12年(1879年)ころから本格的に製造されます。
街のベーカリー
明治に入ってから、ホテルやフランス人のもとで修業をした人たちによって、街にベーカリーが続々とオープンしました。
徐々にパン食が広まって、庶民の食卓にもパンが登場するようになったのです。
あんぱんの誕生


(木村屋総本店)
木村屋総本店が明治7年(1874年)に酒種あんぱんを誕生させて、瞬く間にパンのおいしさが拡がりました。
これは、木村安兵衛さん親子が、おいしいパンを一生懸命研究した成果でした!
この酒種生地製法のあんぱんは、安兵衛さんの親友だった山岡鉄舟さん(明治天皇の侍従)が
間に入って天皇に献上し、お気に召されたことでも有名です。
また、ちょうど同じころ名古屋方面では干しブドウの入ったパンも登場していました。
パン食ブーム

様々な菓子パン誕生により、一気に親しみやすい食べ物となったパンですが、
明治22年(1889年)の経済恐慌、翌年の米騒動がきっかけでパン食に注目が集まりました。
この時に大流行したのが【食パンの味噌・醤油のつけ焼き】です。
【食パンのつけ焼き】とは、パンを切って味噌または醤油をつけ焼きするか、キナコをつけて食べるものでした。
米騒動がおさまってからも『つけ焼きパン』や砂糖蜜をぬった『蜜パン』は、順番札が必要なほどに売れたそうです。
『蜜パン』の人気から、家庭でも食パンに砂糖をかけて食べるようになりました。
「菓子パン」の記録


(木村屋総本店)

このころに東京上野で開催された第3回内国勧業博覧会のなかで、菓子唱歌が登場。
その中に「菓子パン」「餅パン」「卵パン」という歌詞が入っていた記録があります!
日本独特のオリジナルパンの拡がりはさらに大きなものとなりました。
明治28年(1895年)に清新堂の猪狩時晴さんが甘食を、
明治32年(1899年)に木村屋総本店3代目の木村儀四郎さんがジャムパンを、
明治37年(1904年)には新宿中村屋の相馬愛蔵さんによってクリームパンが発売され、それぞれ大評判を呼びました。
この後にロシアパンにも注目が集まりますよ。

夏目漱石;吾輩は猫である
彼らは毎朝主人の食う麺麭(パン)の幾分に、砂糖をつけて食うのが例であるが、
この日は丁度砂糖壺が卓の上に置かれて匙(さじ)さえ添えてあった。
…云々…
パン業界の人間はこの部分が大好きです(^^♪
メロンパン

(2022.6.3の本日のパン)
▣メロンパン…ビスケット生地をかぶせた菓子パン
・名前の由来は諸説ある。
形がメロンに似ているから、”メレンゲパン”が訛った、
メロンエッセンスを加えたから、メロン型を用いたから…など。
・ルーツもそれっぽい話がわんさかある。
1900年代にアルメニア人のパン職人がロシアの伝統から発明した、
駒込の木村屋の製パン新法の開発で生まれた、
アメリカ経由で入ってきたメキシコの菓子(コンチャ)に類似している、ドイツの菓子、
香港や台湾のパイナップルパンが類似している…など。
・つりがね型をしたもので、ビスケット生地をかぶせないものもある。
・近畿地方では丸型とつりがね型の両方ある。
・神戸や京都、大阪などでは白あんが入っているものがある(つりがね型)。また、「サンライス」と呼ぶ人もいる。
・広島市呉市ではカスタードが入っているものもある。また、呉市の一部では「メロンパン」をコッペパンと呼ぶ。
・「メロンパン」と「サンライズ」
《メロンパン》
・亀の形の”カメロンパン”や富士山型の「メロンパン」などもある。
・様々な色や味、クリームが入った「メロンパン」がブームになり、今でも名残がある。
《サンライズ》
・神戸に本店がある金星堂の呉支店;日の出を模して作られた丸型の「サンライズ」があった。
その後入ってきたつりがね型の別物の「メロンパン」に混同されて、両方とも「メロンパン」と呼ぶようになった。
・中部地方の一部では「サンライズ」と呼ぶ。
・アンデルセンとリトルマーメイドの本社がある広島では、「サンライズ」と呼ばれている。

「メロンパン」と「サンライズ」…
もとはちがうパンだっただけに、なんだかややこしいですよね。
ちなみに、Parisのシャンゼリゼ通りに日本のアンデルセンがありましたが、
そこでは「メロンパン」でしたよ(^^♪
コロネ(コルネ)


コロネも日本特有の菓子パンです。チョココロネが代表ともいえます。
円錐形の型(コルネ型)に生地を巻いて焼き、巻貝のような形のパンにクリームを入れて仕上げる菓子パン。
コロネ(コルネ)は、フランス語の角(CORNE)、管楽器のコルネット(CORNET)が語源と言われています。
同じ菓子パンでも、クリームパンやチョコレートパンとちがってクリームを焼かず、
後から入れるみずみずしいクリームが味わえます。
アイスのコーンの代わりにコロネを使う応用もあります。
菓子パンの生地
パン屋さんの菓子パンたちは、1種類または数種類のパン生地で統一されていることが多いです。
例えば、あんぱんとクリームパンと、コロネとメロンパンのパン生地は同じっていうことです。
あん・カスタードクリーム・チョコクリーム・メロン皮にちがいがあるので、全く違和感がありません。
また、フィリングとのコンビ芸でもあるので、菓子パン用生地はでしゃばらなくてよく、この考え方が成り立つのです。
調理パンにも同様のことが言えます。
菓子パン生地の小麦粉の配合

菓子パン用の生地は、ある程度オールマイティでクセがないものが相応しいです。
小麦粉の強さはパンの食感に直結するので下記のように提案します。
《菓子パンの小麦粉の配合》
A.強力粉70%+準強力粉30%→大工場向き、中種製パン法、糖分20%以下の場合
(発酵耐性・機械耐性に強い)
B.強力粉50%+準強力粉50%→中・小型工場向き
(A.に比べて発酵耐性・機械耐性がやや劣る)
C.強力粉30%+準強力粉70%→大型パンに向く
D.準強力粉100%→ホームベーカリー・小型工場向き
(砂糖や油脂の少ないものに効果的)
E.強力粉100%→リッチな配合に向く
F.強力粉80~90%+薄力粉20~10%→オーブンフレッシュベーカリーに向く
(砂糖量をやや多くするとともにイースト量も増やす)
菓子パン まとめ
今日は「フィリングにあわせて七変化する菓子パンは芸術だ!」
「菓子パンと調理パンのレシピを持っていると、パンのバリエーションが広がるよ」
「それにしてもあんぱんの不動の人気に感心しちゃうね」というおはなしでした。

わたしの菓子パン生地レシピはこちらからご覧ください♪↓↓↓
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