
パン作りで一番よく使う乳製品、それは脱脂粉乳です。
『乳製品のはなし』で、パン作りの役割に少し触れましたが
ここでは、脱脂粉乳にのみ特化して製パン時に気を付けることを記しておきます。
脱脂粉乳ってなぁに?

脱脂粉乳とは、無脂肪乳(牛乳から全ての脂肪分を抜いたもの)を粉にしたものです。
粉ミルク・バターミルクパウダー・スキムミルク・コーヒーパウダーとはどう違うのでしょうか?
これらはいわゆる粉乳です。もとは生乳や牛乳。
先に言っておくと、同じなのはスキムミルクです。強いて言うならスキムミルクは商品名。
それでは、脱脂粉乳も含めた粉乳のあれこれを並べてみます。
全粉乳

牛乳や生乳から水分を除去して乾燥させて粉末状にしたもの
脱脂粉乳
牛乳や生乳から乳脂肪分を除去して、水分を除き乾燥させたもの
ホエイパウダー
乳清から水分を除去して乾燥させた粉末状のもの
乳清とは、牛乳から乳脂肪分やカゼインを除いた水溶液で、ホエイ/ホエーとも呼ばれる
※カゼインはリンタンパクの一種。牛乳から乳脂肪とホエイを取り除いた残りの不溶性固形成分で「凝固するタンパク質」。
バターミルクパウダー

バターミルクから水分を除去して乾燥させた粉末状にしたもの
加糖粉乳
牛乳や生乳にショ糖を加えて水分を除去して乾燥させたもの、または全粉乳にショ糖を加えたもの

コーヒーに入れるクリーミングパウダーの「クリープ」は
乳製品+ショ糖+αでできているのでここに分類できます♪
調整粉乳

牛乳や生乳、またはこれらを原料として製造した食品を加工したもの、または、これらを主要原料にして乳幼児用に栄養を添加して粉末状に加工したもの
粉ミルク
育児用調整粉乳ともいう。母乳の代用。
脱脂粉乳や乳糖、乳清パウダーなどにビタミン・カルシウム・マグネシウム・カリウム・銅・鉄などのミネラル、母乳オリゴ糖・タウリン…など赤ちゃんの発育に必要な各種栄養素が配合されている。
規定は厚生労働省が管轄している(食品衛生法)

最近は大人用の粉ミルクも発売されています!
パン作りと乳製品

食パンや菓子パンなどのソフトな食感のパンを作る時に使うことが多い乳製品。
乳製品の持つ乳糖によって、生地にほのかな甘みと風味を与えます。
また、乳糖と脂肪分が生地を潤す働きをするため、クラム(身)がやわらかくなります。
さらに、もうひとつの乳糖の働きとして、焼き色がつきやすくなります。
そして、栄養価が高いことも乳製品の特徴です。
乳製品を加えることで、タンパク質や無機質成分が増えます。
これらは乳製品全般の役割です。

乳製品の弱点はデリケートなので、
比較的扱いやすい脱脂粉乳が選ばれるわけです!
脱脂粉乳のパンに与える影響

粉末状の脱脂粉乳は作業性にも優れています。
ところが、配合や工程に与える影響は意外と大きいので、知っておく必要があります。
配合量
⑴配合量多い…生地がまとまらない、硬い、発酵力の低下、しょっぱくなる、吸水が大きい、クラム(身)が粗くなる

酸化剤となるモルト(麦芽糖)を加えることで、
調整ができます。
⑵配合量少ない…一次発酵・二次発酵に時間がかかる、生地がやわらかい
水分量に影響
実は、脱脂粉乳の分だけ水を増やすのが原則です。
配合量が多いと生地が硬くなるということでもわかるように、吸水率が増すからです。
水分量が増えるということは、「ミキシングもその分長くしなければならない」と連動していきます。

脱脂粉乳にはグルテンを補強する力があるので生地は弱りません。
まとめ

今日は「昔から学校給食でも脱脂粉乳の栄養価は買われていて、当時のこどもたちにはコッペパンなどが大事な存在だったよ」
「コーヒーのクリーミーパウダーの中で乳製品が原料になっているのはクリープだけだよ」
「だから、スキムミルクの代用にコーヒーのクリミーパウダーは使えないね」
「日本のスキムミルクにはおよそ3.5%の水分が入っているよ」
「結局のところ脱脂粉乳の一般的な配合量は2~3%だよ」
「菓子パンなどでは4%の配合量を採用することもあるよ」というおはなしでした。
参考記事:コッペパンのはなし(←戦後、アメリカから小麦と脱脂粉乳が配られたはなしはコチラ)
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