無類のレーズン好きさんってたまにいますよね?
わたしの身近では父とその母である祖母がそれです。
父は「アイスはラムレーズン」「お土産はレーズンバターサンド」「パンはレーズンパン」
「食パンにはレーズンバター」「カレーライスにもレーズンをトッピング」と言った具合でした。
「レーズンかけときゃなんでも美味い!」的発想は時に首をかしげる組合せもありましたが、
レーズンが小さいころから身近な存在だったことと、レーズンパンを作る際に気合が入ったことは言うまでもありません。
お店をやっていたころは祖母も元気だったので毎月レーズンパンを送っていました。
「このレーズンパンは世界で一番おいしい!」という言葉は孫冥利に尽きました。
レーズンパンはどこ生まれ?
レーズンパン/レーズンブレッドはアメリカの代表的なスペシャリティブレッドのひとつです。
レーズンの生産地と言えばカリフォルニアを挙げる人が多いのではないでしょうか。
レーズンブレッドはそのアメリカ;カリフォルニアを主産地としたレーズンを主に使用することから始まりました。
その創製は今からおよそ100年前と言われています。日本にも早く伝わりました。
今日では使用するレーズンの種類もパンのバリエーションも増えました。
レーズンの種類
レーズンは干しブドウと呼ばれるように、天日または熱風などの人工的手法で乾燥したぶどうの果実です。
原料のぶどうの種類によって、緑・黒・青・紫などがあります。
もともとぶどうには多くの水分がありますが、乾燥によって15%くらいまでに減らされて成分がギュッと濃縮されています。
重量の60%を果糖などの糖分で占めているので、大変甘いです。
そのため、長期間保存されると糖分が結晶化して食べるとじゃりじゃりしますが、問題なく食べられます。
カリウム・食物繊維・カルシウムなどのミネラルも豊富!
酒石酸・ポリフェノールやサルチル酸も比較的多く含まれます♪
レーズンの歴史
紀元前1300年ころにフェニキア人(現在のレバノン辺り)は現在のスペインやギリシャにぶどう園を経営していました。
同時期に、オスマン国の少数民族であるアルメニア人もペルシャでぶどう作りをしていました。
このフェニキア人とアルメニア人交易から古代ローマに広がっていきました。
ぶどうの栽培業者たちは1851年にワイン用のマスカットレーズンを栽培し始めたのですが、
アメリカのサンディエゴでは気候などが合わず、探し求めてたどり着いたのがカリフォルニアでした。
栽培されるぶどうは種なし(ナチュラル・シードレス)が主流となりました。
カリフォルニアレーズン
生産国;アメリカ(カリフォルニア)
世界の生産量の40%、日本で消費している約89%はカリフォルニア産と言われています。
わたしたちが普段食しているレーズンのほとんどがカリフォルニア産です。
サルタナレーズン
生産国;トルコ・オーストラリアなど
「サルタナ」は黄金色をした乾燥ブドウをさします。
ときには二酸化硫黄を用いて黄金色にする加工法もあります。
暗褐色でサルタナと呼ばれるものもあります。
ブラックカランツ
生産国;地中海エリア、ギリシャなど
レーズンよりも黒くてひとまわり小ぶりです。
名前の由来はギリシャの都市;コリントから来ていると言われています。
サンマスカット
生産国;オーストラリア
サルタナとマスカットを掛け合わせた品種です。
他のレーズンと比較してほのかに甘いのが特徴です。
日本のパン屋さんの傾向
レーズンブレッドは*ホールセール(卸向き)とリティル(直売)に分かれています。
前者のレーズン配合量はやや少なく40~60%で、後者は多くて70~120%になっています。
(参考記事:パン屋さんの種類 *ホールセール・リティル)
日本においては、20~30%の配合量だったのが少しずつ増加され、50~80%くらいまで引き上げられています。
【ホールセールでは50%くらいでリティル製品は70%以上が常識】という説もあるので
どこをとるかは非常に難しいところです。量が多ければいいってものでもないですからね。
レーズンブレッドの形
レーズンブレッドの形は型焼きと型を用いない棒状や円盤型、輪型、編みパン、小物など様々な形があります。
製法は中種法・加糖中種法と直捏法があります。
中種法が一般的ですが、リティルでは直捏法も使われます。
レーズンブレッドの製法 ポイント
レーズンブレッドを作る際に気をつけること、知っておくべきことを紹介しておきます。
原材料
⑴小麦粉…良質の強力粉の使用がよい。超強力粉・準強力粉などの併用で食感を調整する
⑵砂糖…一般にレーズン量が多くなるにしたがって糖量を少なくする
⑶食塩…1.5~1.8%が範囲
⑷油脂…一般にはショートニングでよいが良質なものを使用する(4~8%)
⑸乳製品…中種法の場合はスキムミルク(脱脂粉乳)2~4%使用がよい
⑹卵…なくても良いが使用するなら5~10%
⑺イースト…中種法の場合は2.5~3%、ストレート法は3%、リッチな配合でも5%以内
⑻レーズン…サルタナを混ぜる場合はレーズンに対してサルタナ0.5%にとどめておく
⑼香辛料…バニラやシナモンはレーズンに合う(0.1~0.5%程度)
工程
⑴捏ね上げ温度…28~29℃
⑵一次発酵…本仕込みの際は10~15分
⑶生地分割…レーズン量が多い場合は型に対する生地の割合を増やす
例)わたしが使用している型は食パンだと510g(170g×3玉)です。
レーズン(50%)の時には600g(200×3玉)にします。
⑷ベンチタイム…レーズン入り生地は伸展性がよいので長すぎるベンチタイムはNG(通常10~15分)
⑸成型…ガス抜きをし損ねるとパンになった際にレーズンのまわりが空洞になりやすい
⑹二次発酵…白パンよりも充分にとる
⑺焼成…オーブン設定を高くし過ぎない(焼焦げ・火通りが悪くなる)
レーズンの前処理の方法
参考:本日のパン2022.4.30 シナモンレーズンベーグル
本日のパン2022.7.02 カスタード&レーズンロール
レーズンブレッドに用いるレーズンは前処理をします。
前処理をすることによってレーズンがふっくらとしますし、
レーズンに残っている小さなヘタなどを取り除くことができるので、よりおいしいパンになります。
⑴10分前後水につける…①食塩水の場合は3~4%②輪切りレモン水③ぬるま湯
⑵もみ洗い…水に浸したらもみ洗いし、水洗いする(洗いすぎNG)
⑶水切り…ザルにあけて水気をきる
⑷フレーバー…ブランデー、ラム酒、バニラ、シナモンなどは最後にレーズンに絡める
レーズンパン まとめ
レーズン使用のパンはとても多いので、それぞれの配合や工程があるのですが
奥深いレーズンパンを知って、明日レーズンパンが食べたくなってくれたら嬉しいです。
今日は「レーズンパンを作る時はおばあちゃんを思い出すよ」っていうおはなしでした。
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