
日本でプレッツェルというと、ドイツのラウゲン・ブレッツェルよりも、
アメリカン・プレッツェルを連想する人の方が多いのではないでしょうか?
そうなのです。プレッツェルには2種類あるのです。
プレッツェルの思い出

ドイツと言えば、ビールとプレッツェル!というイメージが一般的にあります。
わたしは10代のパン学生の卒業旅行で、1ヵ月くらいでヨーロッパをやたらと忙しく巡りました。
そのドイツの夜のことです。
メニューは、オイルフォンデュとソーセージにサワークラウト、飲む人は(専門学校なので未成年だけではない)ビール…ドイツ尽くし(?)でした。
しばらくして、どこからか民族衣装っぽい姿で湧いてきた、アコーディオンを弾きながら踊るおじさんたち(音楽隊)に呆気にとられながら、
そのおじさんに捕まって、一緒に踊るはめになった洋菓子科の女の子を見て見ぬふりをしながら、
巻き込まれてなるものかと、これまた、料理に夢中なふりをして過ごしました。
そんな中で唯一、本場のプレッツェルに感動したのを覚えています。
あいにくドイツの滞在は超短く、しかも日曜日でパン屋さんが閉まっていたため、ツアーの食事でしかパンは食べられませんでした。
その後に立ち寄ったウィーンのパン屋さんでは、ライ麦のパンはあったけどプレッツェルに出会えなかったので、
あの恐ろしく落ち着かなかった、ドイツのレストラン?での夜ごはんに感謝したのでした。
参考記事:母校は東京製菓学校 パン専科(1993-1994)
ラウゲン・ブレッツェル

ラウゲン・ブレッツェルとも呼ばれているドイツパン、ブレッツェル。
ドイツ語ではBrezel(ブレーツェル)です。
小麦粉とイーストで作るヴァイツェンブロート(ホワイトブレッド)です。
特徴的なのは、製法と形状。
⑴製法…最終発酵した生地をラウゲン液に浸してから焼成する
⑵形状…腕を組んだような形
ラウゲン液の正体

ラウゲン液の正体は、3~4%の苛性ソーダを加えたアルカリ性の液です。
【苛性ソーダ=水酸化ナトリウム】。
正体を知るとギョッとしませんか?まさか劇薬を使っていたとは…!
水酸化ナトリウムといえば、化学の実験とかで使っていた危険な薬品です。
日本では18歳以下は購入できないとか、購入時に書類が必要だとかの、アレです。
手作り石鹸を作ったことがある人は、水酸化ナトリウムを購入・使用したことがあるかもしれません。
なんでそのようなものが、ドイツの台所にあったのかわかりませんが、
『うっかりパン生地がラウゲン液に浸り、とりあえず焼いてみたらおいしかった』という起源です。

よく食べてみる気になったなぁと思います。
そして、パンはいつだって偶然から始まるのですね。
ありがとう、昔の人!
※焼いたら毒性は飛びますのでご安心ください※
ラウゲン液の代用

日本でラウゲン・ブレッツェルを作る際は、だいたい苛性ソーダの代わりに重曹やかん水を使用します。
要するにアルカリ濃度2~10%の液を作ればよいのですから。
重曹水を沸騰させると、二酸化炭素と反応して炭酸ナトリウムに変化します。
沸騰したラウゲン液に浸すことで、パン生地にモチモチ食感と濃い色がつくようになります。
アルカリ濃度によって焼き色の濃さに違いが出ます。
※Lauge:ラウグ=アルカリ溶液を表すドイツ語です。

「重曹水を沸騰させる」この技は
お掃除の油落としにも使われますよね
パン屋さんのシンボル

プレッツェルはパン屋さん(ベッカライ)のシンボルとして、よく店の看板やマークに使用されています。
なぜこの形をしているのか?というのは諸説あります。
⑴3つの三角形が神と人間と自然のサイクルを表している
⑵祈りを捧げている修道士
⑶3つの穴がキリストの三位一体を象徴している
⑷聖母マリアがイエス・キリストを抱いている
⑸十字架にかけられたイエス・キリスト
⑹窃盗罪をおかしたパン職人に出された難問「1つのパンから1つの太陽が3度見えるものを作れ」の答え
⑺「愛」を表している

いずれにしても宗教に関係があったパンだと想像できます。
【名前の由来】
「腕/腕組み」の古いラテン語やドイツ語が
ブレッツェルに発展したと言われています。
アメリカン・プレッツェル



アメリカやカナダなど北米でプレッツェルと言えば、小さなポリっとかじれるスナックタイプのことを指します。
そして名前はプレッツェルでも、「腕組み」ではなくて棒状や「ツリー」など形のバリエーションがあります。
また、柔らかくて甘みのあるソフトプレッツェルがパン屋さんで売られています。

ポーランドのプレッツェル

ポーランドに、Obwarzanka(オブヴァジャネック)というパンがあります。
これは、プレッツェルやベーグルの祖と言われています。
600年の歴史があるオブヴァジャネックは、EUの原産地名称保護制度に認定されています。
そのため、伝統の製法でなおかつ、手作りでなければ名乗れないという規則があります。
様々な地域に広まっていますが、古都クラクフが本場です。

クラクフ名物として、
街に販売ワゴンもありますし、
製造体験工場もあります♪
まとめ

今日は「日本ではオブヴァジャネックはまだあまり知られてないよね」
「わたしが勤めたパン屋さんでは、チョココロネの蓋(セロファン)代わりにアメリカン・プレッツェルをくっつけていたよ」
「基本的な作り方だとイースト多めで発酵はほとんどとらないよ」
「白い部分は、横一本の切込みを入れてわざと割れるようにしているよ」
「ラウゲンコーティングは乾燥を防ぐ役割もあるよ」
「実は、プレッツェルは古代エジプトで、紀元前4世紀ころから作られていたという説もあるよ」というおはなしでした。

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