ピッツァとピザとってなにか違いがあるんでしょうか?
答えとしてはどちらも同じですが、イタリア式かアメリカ式かで言い分けていること(人)もある(いる)ようです。
わたしはメニュー名以外は“ピザ”という派ですが、今回は“ピッツァ”の表現からスタートしてみようと思います。
ピッツァの歴史
イタリアのナポリが発祥の地とされているピッツァ。
しかし、語源は「はっきりとわからない」のだそうです。こんなにも有名なのに不思議です。
名前の由来がわからないけれど、『そのはじまりはフォカッチャだった』という声が圧倒的です。
フォカッチャはジェノヴァ生まれですが、今はどこにでもあり、呼び名も変わっています。
かたいもの、やわらかいもの、大きさや厚みもさまざま。甘いもの(フォカッチャドルチェ)まであります。
中世ルネサンス時代
フォカッチャは、中世ルネサンス時代にはすでに食べられていました。
オリーブオイルを使用したさっぱりとしたフォカッチャは、色々な機会に食されるようになりました。
《ここに注目!!フォカッチャのいいところ》
①あらゆる食材と相性がよい
②焼くと保存がきく&かさばらない
③持ち運びにも便利
例えばチーズ・肉類・新鮮な魚介などをのせて食べられていたといいます。
このようにして、のちにピッツァになる”食材をのせて焼いたフォカッチャ”が、イタリアの各地に広まっていきました。
16世紀
ピッツァの名前が書物に登場するのは16世紀(1507~1566年の詩人による書物)で、
そこに『Pizza』という言葉が載っています。
ただし、このころはまだフォカッチャに近いものであったと言われています。
なぜなら、まだトマトがイタリアに登場していなかったからです。
18世紀以後
トマトがイタリアに上陸したのは、新大陸発見以後のことです。
16世紀半ばには栽培が始まっていたとされますが、このころのトマトはなんと観賞用でした。
それが料理に使われるようになったのは、18世紀になってからです。
Pizzaという言葉の登場以来、実に200年もあとになって、ようやく現在のピッツァに近づいていったのでした。
19世紀
1830年には、すでにナポリでピッツァのお店;ピッツァリアが誕生しました。
ピッツァが商売として成立して、味で競い合うようになっていったのです。
火山岩のピザ窯が生まれたのもこのころです。
そして、マルゲリータ王妃の名前をとった“ピッツァ・マルゲリータ”が誕生しました。
マルゲリータ王妃が、“庶民が食べるピッツァ“に興味をもって作らせたピッツァ。
ピッツァを依頼された有名なピッツァ店の職人が、
【王家に敬意を払って、トマトソース・バジル・モッツァレラチーズでイタリア国旗の3色をあらわした】
という逸話の真偽のほどは不明です。
19世紀後半
19世紀の後半になると、アメリカに多くのイタリア移民が渡っていきました。
貧しいイタリア移民たちは、アメリカでパンを買うことができませんでした。
そのため、自宅でピッツァ生地を作ってパン屋さんに持って行き、焼いてもらいました。
これによって、アメリカにもピッツァが伝わり、アメリカンピザの原型となったのです。
1905年に、ニューヨークにはじめてピザ店が開業しました。
その後1920年から、イタリア移民が多かったアメリカ北部を中心に、ピザの店が増えていきました。
1940年頃~
アメリカでピザ市場が飛躍的に発展するのは、第二次大戦後です。
イタリアに従軍していたアメリカ兵が現地で食べたピッツァのおいしさに感動して、
帰還してからもおいしいピッツァを求めるようになりました。
そして、1940年半ばにガスオーブンが誕生します。
このオーブンがそれまでのレンガ造りのオーブンよりも優れていたので、瞬く間に全米にピザが広まっていきました。
1950年代には工場生産がはじまり、さらに1960年代には冷凍生地も登場して、スーパーマーケットでも販売されるようになりました。
現代でもピザ産業はアメリカが1位、イタリアが2位…アメリカは本家を追い越してピザ大国になりました。
日本のピザ伝来
日本には“アメリカの文化のひとつ”として紹介されました。
米軍基地周辺で軍人向けに作られたピザ店に若者が通うようになって、じわじわとピザが広がっていきました。
1955~1965(昭和30~40)年にかけて、冷凍ピザや冷凍生地が輸入されるようになりました。
喫茶店でピザが出されるようになったのはこのころです。
このあとにピザブームが3回やってきます。
⑴1976~1977(昭和51~52)年頃…チーズの普及活動がさかんになり、雪印乳業や明治乳業が市販の冷凍ピザの販売をはじめ、認知度があがりました。
⑵1979~1980(昭和55~56)年頃…ファミリーレストランが全国的に広がり、メニューの一番最初にピザが紹介されるようになりました。
⑶1984(昭和60)年…宅配ピザ『ドミノ・ピザ』が東京(恵比寿)で開業して一気に人気が加熱し、全国に広まりました。
そして現在、イタリア料理店を中心にピッツァを出す店が増え、人気を保っています。
ピッツァの雑学
ピッツァの規格
ピッツァっていろんな種類がありますが、規格ってあるんでしょうか?
⑴日本のイタリア風生地…平均130~150g/1枚、薄力粉~強力粉使用
⑵ナポリ生地…180~200g/1枚
《ナポリのピッツァを名乗るには…》
ナポリでは当地に伝わる伝統の作り方を守ろうという組織があり、名乗るのに様々な条件があります。
例えば…
・薪窯をつかうこと
・生地にオリーブオイルを練り込まないこと
・生地は手で捏ねるか、協会指定の機械を使用すること
・生地は必ず手でのばすこと など
⑶シカゴスタイル…別名ディープディッシュ、深皿で作った分厚い生地、強力粉、トッピングが2層
⑷ニューヨークスタイル…別名ナポリスタイル、強力粉のクリスピーな生地、16インチ/1枚
⑸ウェストコーストスタイル…薄力粉~中力粉使用、6~9インチと小ぶりで1人前ずつ焼く
規格があるようなないような…というのが答えです
ピザトースト
日本ならではの発明品である「ピザトースト」は、1965(昭和40)年代中ごろに生まれました。
世間のピザブームと重なって生まれ、喫茶店の新しいパンメニューとして人気となりました。
当時は「ピザトースト」ではなく、「パンを使ったピザ」と呼ばれていました( ゚Д゚)!
タバスコ
ピザと言えばタバスコ(タバスコ・ペパーソース)!という人は多いと思います。
しかし、ピザにホットソースをかけるのは、世界中で日本だけなんです。
なぜこうなったかというと、ホットソースが日本上陸した際に、コーヒーショップを中心にホットソースを売り込んだんですね。
その結果として、そうしたお店の定番商品のピザやスパゲッティに、ホットソースをかける習慣がついたそうです。
日本のイタリアンレストランで
オリーブオイルに赤唐辛子を漬けたものが出てきたりするのは
こういう事情だったんですね。苦肉の策的な…
ピッツァはおやつ
イタリアでは、リストランテやトラットリアではピッツァを食べることはできません。
ピッツァは、ピッツァリア(ピッツァ専門店)や屋台で気楽に食べる軽食なのです。
イタリア人がピッツァを食べる時は、バラエティにとんだメニューを並べることはせず、あくまでもピッツァをたらふく楽しむのが習慣です。
つまり、イタリアでは正式な食事というより、おやつや夜食感覚なんですね。
余談ですが、
フランス留学時のエレーヌ宅に、イタリア人の女の子もやってきました。
スパゲッティを切り刻んで食べているのを見た時は、衝撃でした( ゚Д゚)
「みんな(ナイフとフォークで)切って食べるよ」って言っていましたが…どうなんでしょう…
ピッツァの仲間
カルツォーネ~calzone~は、イタリア語でストッキングとかズボンの意味があります。
日本では包み焼きピザとも呼ばれている、両面焼きのペストリーです。
ピッツァと同様の生地で、マルゲリータと同様の具材を三日月状に包むのが定番です。
ですが、カルツォーネもまた
アメリカのものとイタリアのものと
ちがいがあっておもしろい…
まとめ
パン屋さんに必ずあるわけではないけど、パンの仲間には間違いないピッツァ。
わたしがお店(プチペ)をやっていた時は、パン屋さんらしく“全粒粉が入った生地のパンピザ“を出していました。
自家製のトマトソースと自家製のホワイトソースと、ごはんをのせたライスピザの3種類。
今日は「フォカッチャの進化ってすごい!」「ピッツァっておやつだったのね」
「日本では何も気にせず好きなピザを楽しもう!」というおはなしでした。
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