
ベーグル(Bagles)は「アメリカのパン」と紹介されるけれど、必ず補足されるのが
『かつてユダヤ人が日曜日の朝食に食べていたパン』
『ユダヤ系移民によってアメリカに渡った』という内容です。
日本でもそれなりに定着していて「ベーグル=パン」とわかる人が多くて、説明要らずです。
ベーグルの歴史

17世紀(1600年後半)に、ユダヤの人々の間で誕生したとされるベーグルですが、
なぜか、詳しいことはわかっていません。
ただ、『1610年にユダヤ人共同体の文献に登場したのがはじまり』と言われています。
それから、ポーランドが発祥地であることは間違いなさそうです。
それを裏どりするかのように、フランスでは、ニューヨーク風が流行する前からポーランド風が扱われていました。
その後、19世紀から20世紀にかけて、ロシア・ポーランドなどの東欧諸国のユダヤ人が続々とニューヨークに移り住むようになりました。
このようにして、ニューヨークの地にベーグルが定着していったのです。
そして1990年代になると、それまでニューヨークに集中していたベーグルショップが、
中西部や南部などの地域にもオープンし始めました。
そのまま全米規模のベーグルブームが巻き起こりました。
日本には、1980年代に上陸していて、ごく一部の人に知られていました。
東京・六本木にあった『フォックス・ベーグル』(1982年7月~)が先駆けの火付け役です。
実は「日本でベーグルを食べたい!」と、ジャーナリストのフォックスさんが起業したんです。
さらに、1992年には『ベーグルK』が輸入を始めました。
それらもあって、1996~97年ころには一大ブームとなりました。
『フォックス・ベーグル』やそれを真似た専門店の出店/開店の勢いもすごかったですよね。
残念ながら、『フォックス・ベーグル』は2002年に閉店してしまいました。



ベーグルの特徴

このパンの最大の特徴は、焼き上げる直前に一度、湯せんにくぐらせることです。
もう1つの特徴は、ドーナツ型という形状。
そして、配合。アメリカや日本で気に入られたのは「ヘルシーなパン」と謳われたからだと思います。
実は、上記のイメージ以外にもいろんなベーグルがあります。

「生地を茹でる」パンはほかにもありますよ♪
生地を茹でるパン

はじめにサラッとお伝えしておくと、ヨーロッパにはパン生地を茹でた後にオーブンで焼くパンが他にもあります。
例えば、ドイツのプレッツェル。
ラウゲン液というアルカリ性の液体に通してから焼成します。

参考記事:プレッツェルのはなし(ベーグルとプレッツェルの祖:ポーランドのオブヴァジャネック)
イスラエル風 ベーグル




イスラエルやエルサレムなどユダヤの人たちが食べているのは、
棒状や三日月状、そしてリング状と形が色々なベーグルです。
基本的には、油・バター・卵を使用しない配合で、クラム(身)がギュッとつまっています。

このエリアでは「バゲル」と呼ばれています。
ポーランド風 ベーグル



ポーランド風のベーグルは、生地を茹でる時間が短いです。
そのため、もっちり感が少なくて通常のパンに近い柔らかさがあります。
そして、スパイラル状にした輪にケシの実やゴマをかけて焼くのが一般的です。

ナッツ入りもあります。
フランス人がこちらを好むのはわかる気がします。
ニューヨーク風 ベーグル




ユダヤからニューヨークに渡った時は棒状だったようですが、のちにニューヨークでドーナツ状になりました。
配合は小麦粉(粘りが強く出るグルテン多めのもの)・生イースト(少なめ)・食塩・少量のハチミツ…、これがニューヨーク風です。
ベーグル独特のコシとモチモチを重視しています。
また、油はいっさい使用しないので脂肪分がゼロであり、
タンパク質であるグルテンが多い小麦は、でんぷん質が少ないことから健康志向の人にうけ、
ダイエットにもおすすめと注目されました。
ポピュラーなケシの実やゴマのほかに、シナモン&レーズンやハーブ入りも登場しました。

アメリカでは、茹でる代わりに
スチームで蒸す方法を取り入れる店も出てきました。
また、最近では大量生産に頼り、
手作りしているお店は少なくなっているらしいです。
日本風 ベーグル




日本のベーグルの歴史は40年ほどです。
1990年代のブームの時は、もちろんニューヨーク風が主流でした。
「油や卵を使わないヘルシーなパンが、ニューヨークからやってきた!」と夢中になりました。
当時は、モチモチというよりもガシガシした、硬いクラム(身)のものが多かったように思います。
しかし、「パンはやわらかいもの」「パンは甘いもの」「パンは間食(おやつ)」という考えが多い日本では、
フランスパンよりもクラム(身)がつまったパンの人気は、そう長くは続きません。
自然とアレンジが始まります。
やわらかくするために、砂糖や卵やバター(油脂)を加えました。
これが、日本風ソフトベーグルの誕生です。
「生地を茹でること・ドーナツ状にすること」を守って、日本風ベーグルは堂々と浸透しました。
餡が入ったものや、揚げたものなどもあります。
今ある専門店『ベーグル&ベーグル』では、期間限定商品を含め、
カラフルでおもしろい組合せのフレーバーが、アメリカンマフィンとともに並んでいます。

専門店を中心に、ベーグルと一緒に
ベーグルサンドや、クリーム、ペーストなどの食文化も
日本に渡ってきたのでパンの世界が広がりました♪
まとめ

今日は「ベーグル好きさんのことをベーグラーと呼ぶよ」
「ポーランド発祥のパンが、アメリカ経由で日本に上陸して日本風に変化したよ」
「ユダヤ人はベーグルを食べるとユダヤ人とバレるため、食べなくなった時代があり、ヨーロッパの伝承が遅れたよ」
「海外の市場のベーグルはひくほど盛られてるよ(゚д゚)!」
「わたしのレシピはしっかり日本風だよ」というおはなしでした。


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