「ドイツパン」と見て、どんなパンを思い浮かべましたか?
やはり、形が独特なプレッツェル?それとも、黒いライ麦パン?
8つの国に囲まれたドイツには、もの凄い数のパンが存在します。
実は、世界でも特にパンの種類が多い国と言われています。
大型パンで300種類以上、小型パンや菓子パンは1200種類以上あるなんて、想像以上じゃないですか?
ドイツ語でなんという?
パン屋さんに登場するドイツ語の単語の多くが、日本でそのままカタカナになっています。
よくあるのはパンの名前や店名など。
「あ!聞いたことある!」「そういう意味だったんだ!」というのが幾つかあると思います。
⑴-1パンの総称…brot ブロート
⑴-2小型パン…brotchen ブロートヒェン、semmeln ゼンメル(南ドイツ)、wecken ヴェッケン(南ドイツ)
⑵パン屋さん…Bäckerei ベッカライ
⑶小麦…weizen ヴァイツェン
⑷ライ麦…roggen ロッゲン
⑸混合…ⅿisch ミッシュ
⑹全部/満杯…voll フォル
⑺穀物/粒…korn コン
⑻プレッツェル…brezel ブレッツェル
⑼田舎パン…landbrot ラントブロート
⑽シュトーレン…stollen シュトーレン
⑾菓子パン、ケーキ…Kuchen クーヘン
⑿菓子パン/ペストリー…kleingebäck クラインゲベック
⒀皇帝…Kaiser カイザー
⒁ケシの実、ポピー…mohn モン
⒂薔薇…rosen ローゼン
⒃塩…salz ザルツ
⒄かたつむり…schnecken シュネッケン
ドイツパンの多くは、これらの単語を組み合わせます。
組合せでどんなパンなのかだいたいわかりますが、
たまに変化球があります(^^♪
ドイツパンの分類
ドイツのパンは、『生地に使用する粉の配合や種類』によって幾つかに分けられます。
ここでは、プチペ式に6つのカテゴリーに分けて紹介していきます。
カテゴリー1 ヴァイツェンブロート
【ヴァイツェン=小麦】粉を90~100%配合したパンたちです。
【リーン・直焼き・食事パン】タイプのドイツパン。
【weiss=白】いパン。
少しライ麦が入ることもある。
水分が多くもっちりとした南西部の地方のパン。
表面にキャラウェイシードや粗塩をトッピングする。
【rosen=薔薇】の形をした小型パン。表面にチーズがのることも。
南ドイツではローゼンヴェッケンと呼ぶ。
腕組みをしたような独特の形のパン。
パン屋さんのシンボルマーク。
ライ麦が少し入るものもある。
【カイザー=皇帝】の被っていた冠に似た形のパン。
オーストリアで誕生。
ケシの実やゴマのトッピングのものもある。
【ザルツ=塩】【シュタンゲン=棒】
細長いクロワッサンのような形で、キャラウェイシードと塩をトッピングのパン。
オーストリアで誕生。
これらは全て
発酵種は基本的にイースト酵母です。
参考記事:バターロールのはなし (各国のロールパン)
プレッツェルのはなし
カテゴリー2 ヴァイツェンミッシュブロート
【ヴァイツェン=小麦】にライ麦粉が【ミッシュ=混ざる】パンで、ライ麦の配合率は40~20%。
いずれも【リーン・直焼き・食事パン】タイプのパンたちです。
小麦粉が多ければ、パンの色は白いですが、それでもきめは粗いです。
形状はなまこ型がポピュラーで、表面に何本かクープが入ります。
生地にキャラウェイシードを練り込んだものもあります。
地方によってレーズンやイチジクをたっぷり加えたものもあります。
発酵種はイーストとサワー種(小麦粉・ライ麦粉)です。
カテゴリー3 ミッシュブロート
【ミッシュ=混合】と【ブロート=パン】となると…どうなるのでしょうか。
これは、小麦粉とライ麦のバランスが同量、つまり半々のパンを指します。
そろそろこの辺りから、少しライ麦パン特有の酸味を感じますが、まだ比較的食べやすいはずです。
【リーン・直焼き・食事パン】タイプで
発酵種はパン種・ライ麦サワー種です。
カテゴリー4 ロッゲンミッシュブロート
【ロッゲン=ライ麦】【ミッシュ=混合】は、ライ麦60~80%でライ麦主体のパンたちを指します。
【リーン・直焼き・食事パン】タイプで、発酵種はパン種・ライ麦サワー種です。
なまこ型の大型パン。薄くスライスして食べる。
焼き上げ後7~8時間から1週間ぐらいがおいしいパン。
北ドイツが原産。
なまこ型。本来は表面にひび割れがあるのが特徴。
ドイツ北東部のベルリン近郊で作られた「田舎パン」。
小型パンや、ハーブ(クローバーやキャラウェイシード)などが
入ったものもあります。
カテゴリー5 ロッゲンブロート
これぞドイツパン?!【ロッゲン=ライ麦】100%のパンです。
ライ麦サワー種、ライ麦全粒粉の直方体のパン。
もともとは北部ウエストファーレン地方の伝統パン。
オーブンで短くて4時間、長ければ20時間かけて蒸し焼きにする。しっとりしているのが特徴。
「ニコルのパン」という言葉が訛ってこの名前になったと言われています。
ライ麦全粒粉の粗挽き、イーストとサワー種発酵のパン。
平たい丸型かワンローフ、どっしりとした大型パン。
翌日から1週間が食べごろ。
【フォル=全体】【コン=穀物】のこのパンは、ライ麦全粒粉のほかに、丸麦・大麦・ひえなどの穀物を入れたパン。
発酵種はライ麦サワー種とパン種のため、少しボリュームがある。
ワイン・カフェラテ・スモークサーモン・レバーペースト・ハチミツ&クリームチーズなど色んなものとの組合せがおいしい。
カテゴリー6 リッチな菓子パン
「キリストのかいばおけ」の形をしたクリスマスのパン。
中種法で作る。
表面にカスタードクリームとバター、小麦粉、砂糖で作る「そぼろ」がのった甘い菓子パン。
【ストロイゼル=そぼろ】
天板で大きく焼く北ドイツの菓子パン。
黒ケシの実を牛乳で甘く煮たモーンペーストを巻き込んだペストリー。
【シュネッケン=かたつむり】
ドーナツの原形とも言えるジャム入りの揚げパン菓子。
ベルリンで作られたと言われるが、現在は広まって地方によりバリエーションがある。
クルミやヘーゼルナッツなどのデニッシュ。
シナモンやバターの香りがするイースト発酵の菓子パン。
日本のレーズンパンに似たレーズンパン。
大型のものもある。
ドイツ人とパン
さて、ドイツ人が酸味のあるライ麦パンばかり食べていると思いますか?
答えはノーです。
一般的なドイツ人の食生活では、数あるドイツパンの中でも白いパンが選ばれています。
カテゴリー1や2のようなパンです。
特に、朝ごはんは欠かさない国民性のようで、立ち食いそば屋のような立食式のスタンドもあります。
そして、夜ご飯にカテゴリー3~5あたりのパンが薄めにスライスされて、おかずに添えられます。
ただ、夜ご飯にはパンよりもジャガイモを食べることの方が多いとか。
サンドウィッチ
意外と言うか、イメージ通りと言うか…ドイツの人たちは新しいものを好みません。
サンドウィッチでさえ、「ミッシュブロートにバターを塗ってればいい」と言うくらいなのです。
そのような考えの中、定着しているサンドウィッチは、よっぽどドイツ人好みなんだろなと思います。
この他に
パイナップルをのせた「トースト・ハワイ」や
オムレットを挟んだものなどもあります。
パンへの期待
1980年代に、ある博士が西ドイツの消費者へ「パンに何を期待しているか?」というアンケートをとりました。
その調査結果は、以下のようでした。
・必要な栄養素が多く含まれていること ・色々な種類のパンがあること
・繊維の多いパン ・品質が安定していること ・食感、風味の良いパン
・特徴のあるパン ・ライ麦パン ・パンの小型化 ・ホームベーキング
ドイツパンは健康に良くて、おいしいこと、
この両方を期待されているのですね。
ドイツパン まとめ
今日は「ドイツ人はビールやソーセージだけを食べてるわけじゃないよ」
「食事は野菜や魚もあってヘルシーなので、日本人にも抵抗ない(低い)と思うな」
「今回はドイツパンを広く浅く紹介したよ」「細かくはまた今度!」というおはなしでした。
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