
パンの 添加物 については、賛否両論あると思います。
しかし、パン屋さんの立場では「 添加物 なしにパンはできない」というのも事実です。
かく言うわたしは「無添加パン」の看板を掲げていました。
パンの『無添加の定義』もまた、とても難しいのです。
添加物の種類

パンの添加物と言えば、イーストフード・乳化剤・ビタミンC・モルト…などが思い浮かぶのではないでしょうか?
その数や何百種類とありますので、代表的なものをピックアップいたします。
イーストフード

まず、イーストフードとは何かというと《生地改良剤》で、イースト(酵母)の栄養源としてパンや菓子に用いる 添加物 です。
イースト(酵母)が必要とする栄養素は主に、窒素・リン酸・カリウムです。
これらをビタミンCやアセロラ粉末などの酸化防止剤や酵素剤と一緒に添加します。
その効果は【安定した品質】で、生地の状態だけではなく、焼きあがったパンの品質も保ちます。
そのため、パンを大量生産するには使用必須とされています。
《全面表示が定められている食品 添加物 》16種類
・塩化アンモニウム・グルコン酸カリウム・炭酸アンモニウム・炭酸カルシウム
・硫酸カルシウム・リン酸三カルシウム・リン酸二水素アンモニウム・リン酸二水素カルシウム
・塩化マグネシウム・グルコン酸ナトリウム・炭酸カリウム(無水)・硫酸アンモニウム
・硫酸マグネシウム・リン酸三水素アンモニウム・リン酸一水素カルシウム・焼成カルシウム

※食品衛生法で表示が認められたものを列挙しました
乳化剤

乳化とは、混ざりにくい水と油をまぜることです。
ドレッシングも混ぜないと、油の味と調味料のしょっぱい味にわかれますよね?
かといって、パン生地を作る時に水分と油脂はちゃんと混ざります。
ですので乳化剤は異なる効果があるということがわかります。
《食品に使われる乳化剤》4種類
⑴グリセリン脂肪酸エステル⇒パンによく使用されるのはこちら!(植物性)
⑵ソルビタン脂肪酸エステル
⑶プロピレングリコース脂肪酸エステル
⑷ショ糖脂肪酸エステル
※日用品で使用する場合は『界面活性剤』と呼ばれます
パンにおける 添加物 :乳化剤使用の目的&効果としては、
【澱粉との複合体を作って保水性を高める】【パンのやわらかさの維持】【生地の伸びをよくする】
【生地強化】【ソフトでボリュームのあるパンができる】などがあげられます。
{パンに使用される乳化剤:モノグリセライド、レシチン}
酸化防止剤

酸化防止剤・強化剤の中のひとつにビタミンCがあります。
ビタミンCというと、わたしたち人間も摂取するので健康に良い気がしますが、
パンの 添加物 でいうビタミンCはアスコルビン酸のことで合成 添加物 です。
ビタミンC添加の目的&効果は【グルテンを酸化させ引き締める】【生地のコシを強くする】
【ガス保持力の強化】【窯伸びが良くなる】【スダチがよくなる】
【フランスパンの気泡を大きくするのに使われる】などがあげられます。

まちのパン屋さんでも使っているところは多いですし、
小麦粉やインスタントイーストにはじめから添加されていることもあります
参考:冷凍生地法
酵素剤

パンの主原料の小麦にはデンプン、タンパク質、繊維質、ミネラルなどがあります。
そこに酵素が加わると…【ふっくらやわらか】【均一な焼き色】【伸縮性や弾力性のバランスを改善】【べたつきが軽減される】というような効果がでます。
使用される 添加物:酵素はアミラーゼ類です。

余談ですが、
わたしは唾液中のアミラーゼが多いので
マーボー豆腐やあんかけ焼きそばのとろみは
3口くらいで分解されてサラサラになってしまいます。
※フランスでは*モルトパウダーがよく使用されます。
参考:本日のパン2022.6.3(金)プチパンファンタジーに使用
*モルト=大麦が発芽するときに活性化するαーアミラーゼによってできる副産物の麦芽糖
乳化剤とイーストフードの表示

2019年に「イーストフード・乳化剤不使用」の強調表示に対して自粛する発表がありました。
イーストフードも乳化剤も安全性が認められているのに、「不使用」って表示することで
消費者に 添加物 アレルギーが発症して、思いのほか 添加物 を悪者にしてたってことなんですね。
無添加のむずかしさ

スーパーやコンビニ、百貨店など大手の工場で作られたパンや学校給食のパンには、
厚生労働省が定めている栄養素の基準を守るためにも添加物は使用されています。
わたしがパン屋さんをしていた時は「無添加」と謳っていました。
それは、「パンの添加物」を使用していなかっただけですね。
ショートニングやマーガリンなどの加工品は使っていましたし、
製粉会社が出している小麦粉には、ビタミンCやモルトなどがもともと入っているものもありました。
添加物を使用する際の添加量は極めて少量で、安全性は認められているうえに、
人体に入る前どころか焼成でなくなってしまうものがほとんどです。
でもなんでこんなに抵抗があるんでしょうね…。
以前…と言っても、もう10年以上前ですが、ご主人とパン店を営んでいるパン職人の友人に「添加物、どうしてる?」と聞いたことがあります。
彼女たちはこだわりの天然酵母のパン屋さん出身だったこともあり、
その当時は洗剤を使わないくらいに、徹底して添加物を避けていましたから。
その答えは「ある程度は使ってるよ。原材料にこだわればどんどんパンが高額になる。
それだけではなくて数量も少なくなる。おいしいパンを作るのは絶対だけど、
従業員さんも養ってるわけだからこだわりの優先順位を考えたら、ね。」
というものでした。商売ですからね。これはこれで妙に納得したのを覚えています。
参考:コッペパンのはなし(学校給食のパン)
添加物 まとめ

おうちパンには 添加物 を使わないことがほとんどだと思います。
でもたまに買ってきたパンがなかなか再現できなくて、
やっぱり何かしらの改良剤( 添加物 )の力かな?と思うことがあり、しょんぼりします。
今日は「 添加物 はすごい。」「一口に 添加物 といっても天然由来のものもあるよ」
「でも、入れなくていいなら入れずにおいしいパンが作りたいな」というおはなしでした。
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