小麦粉についてはこれまでも採りあげていますが、種類と等級についてははじめてです。
これまでは小麦の種類でしたが、今回は小麦粉の種類と等級です。
小麦のほかにも、米・大麦・ライ麦・燕麦(オートミール)・とうもろこし・ヒエ・アワなど
色々な穀物がありますが、それらの粉の中ではどんなことをしても“グルテン”を作り出すことはできません。
“グルテンとグリアジン”というタンパク質がそろっていないからです。
“グルテン”ができるというのは、小麦粉だけが持っているスバラシイ特性なのです。
参考;小麦のいのち、グルテン
グラハム粉&全粒粉のはなし
ライ麦と大麦のはなし
オートミールのはなし
とうもろこしのはなし
日本の製粉工場で製造する銘柄数
日本の製粉工場では、なんと50銘柄以上の小麦粉を製造しています。
この種類はものすごく多いです。
例えばアメリカの製粉工場では10~15種類、他の国でも同様です。
日本でこんなに種類が多いのはなぜか?というと、パン工場や麺工場などで使用される業務用も市販しているからです。
製造販売されている小麦粉の約96%がこのような業務用で、スーパーや食料品などから
家庭に流通している小麦粉は全体の4%ほどなんです。
原料の小麦の大部分は
アメリカ・カナダ・オーストラリアなどから輸入されています。
それらと国内産とをブレンドするなどして、多くの種類が作られています!
小麦粉の種類と等級
業務用としてはたくさん品質の特徴がある小麦粉を、どのように分類するかについて定めたものはありません。
しかし、誰が聞いてもどういう品質の小麦粉かがわからないと困るので、
種類と等級の組合せで分類することになりました。
種類
小麦粉の種類とは、耳馴染みのある「強力粉」「中力粉」「薄力粉」などのことで、また「準強力粉」や「超強力粉」なんていうのもあります。
この種類のちがいは、もととなる小麦のちがいによります。
強力粉
▣強力粉…含まれているタンパク質の量が多く、水を加えて捏ねた時にできる“グルテン量”も多いため「力が強い」小麦粉です。
そのため、強力粉の生地はとても弾力があります。
▣タンパク質の量…11.5~13%
▣グルテンの性質…強い
▣でんぷん…一番少ない
▣水分量…14.5g(100g当たり)
▣粒度…粗い
▣原料小麦の種類…硬質
▣主な用途…餃子の皮、中華麺など
▣パンの種類…食パン、菓子パン、テーブルロール、パイなど
▣超強力粉…ホテルブレッド、レストランブレッドなど
▣準強力粉…フランスパン、菓子パン、デニッシュペストリーなど
中力粉
▣中力粉…含まれているタンパク質もグルテン量もすべて中ぐらい、「中くらいの力」の小麦粉です。
▣タンパク質の量…7.5~10.5%
▣グルテンの性質…中間
▣でんぷん…中間
▣水分量…14.0g(100g当たり)
▣粒度…中間かやや細かめ
▣原料小麦の種類…中間質または軟質
▣主な用途…うどん、そうめんなど
薄力粉
▣薄力粉…含まれているタンパク質もグルテン量もすべて少ない「弱い力」の小麦粉です。
▣タンパク質の量…6.5~9%
▣グルテンの性質…弱い
▣でんぷん…一番多い
▣水分量…14.0g(100g当たり)
▣粒度…細かい
▣原料小麦の種類…中間質または軟質
▣主な用途…ケーキ、菓子、てんぷら、ルー、ホワイトソースなど
タンパク質の量は種類の間で少しずつ重なっていますが、
量がおなじでも小麦の種類によって質が異なるため、
グルテンの力の差となってあらわれます。
小麦粉の等級
日本では一般に「一等粉」「二等粉」「三等粉」「末粉(すえこ)」のような等級に分けられています。
上位等級の粉ほど、小麦粉の中に含まれる*灰分の量が少なくて、色もきれいです。
反対に、下位等級の小麦粉になるにつれて、灰分の量が多くなり、色のくすみが増していきます。
*灰分(かいぶん)とは、粉を高温で焼いた時に後に残る灰のことで、粉に含まれるミネラルです。
小麦粉の等級は便宜上のものなのですが、灰分量の目安は一応存在します。
▣一等粉…0.3~0.4% きれいな淡いクリーム色
▣二等粉…0.5%
▣三等粉…1.0%
▣末粉…2~3%
しかし、灰分が多めでも品質が良い小麦粉もあります。ですから、総合的な品質で等級に分けることも多いです。
このほかに、一等粉の中でも特別品質のものを「特等粉」、
一等粉の中でも少し灰分が多めの小麦粉を「準一等粉」と呼ぶことがあります。
こんなに細かいことをやっているのは日本だけです!!
小麦粉の種類と等級の組合せ
このようにして、小麦粉の種類と等級の組合せで分類をすると、
「強力二等粉」とか「薄力一等粉」というような呼び方ができます。
パンを作るには、強力粉と準強力粉の二等粉以上が使われます。
▣準強力一等粉…中華麺(ラーメン)
▣中力一等粉…うどん、そうめん
▣薄力一等粉…ケーキのようなお菓子、上等のてんぷらなど
まんじゅうやたい焼きなどの日本的なお菓子は
中力粉も使われます
用途別の分類
商品棚に「強力粉」「中力粉」「薄力粉」ではない別の名前がついた小麦粉を見たことはないですか?
それはどういう用途に適した小麦粉かと開発されたもの。
「パン専用粉」「めん用粉」「菓子用粉」など。
これらは、強力粉や薄力粉のような分け方では表現できない“中間的な性格の小麦粉”にも向いています。
「フランスパン専用粉」「ケーキ用粉」「カステラ用粉」「お好み焼き用粉」「たこ焼き用粉」「手打ちうどん粉」…
このような専門粉は20年前は業務用だけでしたが、近年では家庭用にも市販されるようになりました。
以前は業務用を購入するためには業者で25kgの1袋を買わなくてはいけませんでした。
今では製菓材料店やネット販売で500gくらいから販売されています。
ありがたいっ!( *´艸`)
小麦粉の性質
淡いクリーム色で粒子が細かい小麦粉は、様々な性質を持っています。
これらの性質を知っておくことは、小麦を使う上でとても大切です。
⑴他の粉体と混ざりやすい…粉同士はフルイでふるうだけで混ざり、砂糖のような粒子が粗いものとも簡単に混ざります。
⑵水気があるものに付着しやすい…肉や魚のように表面に水分があるものにつきやすく、ムニエルにも使えます。
⑶においを吸着しやすい…良くも悪くもすぐににおいを吸ってしまいます。この性質をうまく利用しフレーバーをのせることができます。
⑷顆粒状にもできる…特殊な加工でざらざらの顆粒状にして家庭でも使いやすいものが出ています。
水と熱で化ける
小麦粉に加える水や牛乳、卵液によって異なる3つの状態になります。
⑴生地になる…小麦粉に対して60~70%くらいの水分を加えて、捏ねると生地になる。
(うどんの場合は小麦粉100%に対して30~33%)
⑵バッターになる…ケーキやてんぷらを作る時にはあまり捏ね過ぎないように「練り生地」を作ります。
この「練り生地」をバッターと呼びます。
⑶糊になる…小麦粉に対して5~20倍もの水を加えてよくかき混ぜると、
バッターよりも粘り気の少ないさらっとしたものができます。これを火にかけると「糊化」します。
⑷ルーになる…小麦粉と同量の溶かしバターを加えて炒るとルー(炒り粉)ができます。
まとめ
今日は「強力粉だけ製粉時に水分を使うので、小麦粉になった時の水分が多いよ」
「最近の小麦粉は灰分量やタンパク量も明記してあるよ」
「小麦粉の種類や等級がちがうとやわらかさ・ボリューム・味・焼き色まで変化するよ」というおはなしでした。
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